これは何でしょう? NC旋盤の〇〇を交換

これは、とあるNC旋盤の主軸部分です。なかなかはっきりとお見せするのが難しい部分ではありますが…今回はここの修理の模様をお伝えします。

 

最近、NC旋盤の主軸ベアリング交換作業が続いています

 

毎日休まず、皆さんの仕事のために頑張っているNC旋盤。しかし、それだけ頑張っていると…だんだん、いろいろな所が疲れてきます。今回は、そんなNC旋盤の「主軸ベアリング交換作業」のお話です。

 

金属を切削加工するNC旋盤は、切削屑(切粉)を排出します。でも切削する金属の種類によって、出てくる切削屑(切粉)のカタチも違います。

  ステンレスやアルミ:シュルシュルっととぐろを巻いたような切粉

  真鍮:棘のような切粉

  鋳物:粉のような切粉

などなど…。

傍から見ていると「おぉ!どんどん削れていく!」と感動すら覚えますが、実は機械を分解すると、「なぜこんなところに!」という場所に切粉が入り込んでいることがよくあるそうです。

もちろん、切粉を一まとめにする仕組みもありますが、工作機械の表面にくっ付いていたり、NC旋盤やマシニングの前面ドアの隙間などにも入り込んでいたりします。実際、毎日修理している中島氏とほかの従業員の作業着は、洗濯すると切粉がポロポロ落ちてくるのは日常茶飯事です。

 

さて、いろいろな所に顔を出してくる切粉ですが、当然ながら主軸の機構内にも入り込んでくるのです。また、主軸は工作機械が稼働している間は回転し続けていますので、当然ながらベアリングも摩耗してきます。たとえば

  主軸が発熱した

  ガラガラ、シュルシュル、といった異音がする

  何となく、主軸が重たい感じがする

こういった違和感を覚えるときは、主軸やベアリングのあたりに切粉が入り込んで摩擦が起こり、摩耗している可能性が高いといいます(社長&中島氏談)。その場合、「分解して掃除する」という方法で済む場合もありますが、入り込んだ切粉が多いとか、主軸に大きな負荷がかかっているようならば、ベアリングを交換してしまった方が良い時もあります。

切粉が入り込んだからといって工作機械がすぐに停止してしまうことはありませんが、そのままいつまでも頑張って使い続けていると、主軸が固まって回らない!なんてこともあるのです。

 

 

分解、交換、組立という工程は同じだけど…

 

<切粉はどこに?主軸あたりを分解したところ>

 

主軸あたりに切粉が入り込んでそうだな…という場合、まずは主軸の前後部分にある部品を全部分解して、次の写真のように、本体から主軸を引き抜きます。

 

<とあるNC旋盤から引き抜かれた主軸>

 

<別のNC旋盤から引き抜かれた主軸とベアリング>

 

そして、新しいベアリングに交換して、再度組み立てます。NC旋盤により手順は多少違うこともありますが、

【分解する→新しいものに交換する】

という工程は変わりありません。それでも、1台のNC旋盤に中にはいくつものベアリングが組み込まれていることもあり、一筋縄ではいかないことも多々あります。

 

<1台のNC旋盤から次々と取り出されたベアリングたち>

 

そして新しい主軸を取り付けたら、慣らし運転(主軸をから運転させて馴染ませる)を行ったり、ピックゲージで主軸の中心にズレがないかを確認したりして、作業は終了です。

出張修理人の中島氏は、この作業を何度も経験済。疲れてしまったいくつものNC旋盤を生きかえらせてきました。しかしお客様からすると、そうそう見かける光景ではありません。

先日伺ったお客様(数件ありますが、どこかはナイショ)からは、「主軸ベアリングの交換なんて無理かと思ったけれど、出来るんだね。」とか、「こんなにバラバラにして、組み立てられるのか?大丈夫か?って、こっちが不安になったよ(笑)。」、「調子いいよ。ありがとう!」というお言葉をいただきました。

 

せっかく買った工作機械ですから、末永く大切に使って、お客様には(そして工作機械にも)いつまでも頑張ってほしいです!

展示会に出展!!その後は……?

今回は、修理のお話しとは少し違います、という前置きをしつつ。

株式会社ケーエスアイは、2022年11月に行われた展示会に出展していました。

その名も【第24回 産業ときめきフェア in EDOGAWA】です。

 

展示会自体は江戸川区に籍を置く企業が出展するもので、自社で取り扱う製品や自社開発製品などを展示していました。

しかし。株式会社ケーエスアイには、「工作機械の修理」という技術力はありますが、販売している「自社製品」はありません。何となく出展ブースが広々してしまう…ということで、いつもの「スパナを持った手」を使ったポスターと、中島氏&相馬氏の修理写真を貼ってみました。

図1 展示会のブースの様子

 

あとはノートPCとモニターを持ち込み、2つの動画をエンドレスで流してみました。まずは、修理中の様子をスライドショーにしたもの。

動画1 修理写真のスライドショー

 

それから、普段はあまりこのサイトでは紹介しない社長ですが、何と!産業ときめきフェアの中でプレゼンも行いました!そのプレゼン動画も流してみました。

動画2 社長のプレゼン資料の動画

 

ブースのテーブルの上にはモニターしかありませんので「この会社、何やってるの?」が分かりにくかったかもしれませんが、社長のプレゼンと2つの動画、そしてブースの写真はなかなかのインパクトがあったようです。

ポスターはもう少し大きくても良かったかな?とか、壁を飾る写真をもっと増やしても良かったかな?とか、反省点はいろいろありますが、出展することでの嬉しい効果もありました。展示会に出展後、お付き合いが始まったお客様がいらっしゃいます。展示会パワー恐るべし!です。

色々な事前準備も必要ではありますが、今後もこうした機会を活かして行ければと思います。

大きな機械の小さなパーツ シャーリングのオイルタンク交換

今回の修理は、「シャーリング」。

以前も別のお客様の工場で「シャーリング」の修理を行いましたが、今回は修理箇所が違うとのこと。さて、出張修理人は今回、何をどう修理してきたのでしょうか。

 

 

修理数日前 下見にて「シャーリング」とご対面

 

今回の修理、実は当Webサイトを通じてご連絡いただいた、新しいお客様です。

「出張修理人の軌跡」をご覧いただいた機械商社の方から、「栃木県のとある工場にあるシャーリングの動作がオカシイので、見てくれないか」とご連絡をいただきました。

シャーリングは本来、「手前→奥」の順番で刃が動くはずなのですが、 どうやら手前が動いていないとのこと。恐らく「クラッチが動いていない」可能性が考えられました。そこで、中島氏が下見としてお客様の工場に伺いました。

中島氏は、お客様の工場に到着して機械とご対面。どうやら、オイルタンクが寿命を迎え、機械全体にうまく油を供給できず、クラッチが動かなくなっているようでした。

 

 

何が原因でこうなった?

 

シャーリングのオイルタンクは、機械全体の大きさからすると小さ目のパーツですが、機械全体へオイルを供給するプロパーユニットは、機械にとっては大事なパーツ。機械そのものは電気で動きますが、オイルがしっかりと流れないと、どこかで目詰まりを起こしてしまいます。

必要な時にオイルが供給されなければ、機械は摩耗し、壊れてしまいます。オイルを血液に例えるなら、オイルタンクは体全体に血液を送り出す、心臓のような役割があるのです。

今回のシャーリング、何とかポンプを回すと、一応オイルは流れます。しかし、プロパーユニットから出ていくのは、ほんの数適。これでは、機械の右側で回っている「軸」へ、十分なオイルを供給することができません。

<いつ見ても「デカい!」と思わせるシャーリング>

 

そもそもこのシャーリングはかなり働き者の機械で、ほぼ半世紀くらいは働いてきたようです。しかしこまめに動かしていないとオイルが詰まってしまい、上手く流れなくなります。今回の原因はこのあたりにあるようです。

一応、少しずつはオイルが供給されてはいますが、今の状態のまま修理しない場合、軸やスライドが摩耗し、焼き付いてしまう可能性があります。つまり、機械そのものが寿命を迎えてしまうわけです。自動車でいえば、オイル無しで運転しようとするのと一緒。オーバーホールするという手もありますが、恐らく高級外車くらいの費用がかかってしまいそうです。

中島氏は「目に見える問題箇所はまず直そう」ということで、新しいオイルタンクを注文。入荷したらすぐに修理することになりました。

 

 

修理当日 手先が器用って素晴らしい

 

さて、オイルタンクを注文してからおよそ2週間、やっと入荷したタンクを持って、中島氏は再びお客様の工場へ向かいました。

ところで、このシャーリングは前述の通り、すでに半世紀くらいは働いている機械です。まったく同じポンプを入手することはできませんでした。

しかしここからが中島氏(出張修理人たち)のスゴイところ。シャーリングのメーカーからではなく、まったく別のパーツメーカーから、ほぼ同サイズで同等の機能を持つポンプを取り寄せていました。

というわけで、サクサクと修理を進めていく中島氏。

機械全体は使用感が満載なのですが、新しいタンクとともに交換するパーツはとてもピカピカ!「新品感」が漂っていました。

<機械全体へオイルを分配するプロパーユニット>

 

オイルを分配していくプロパーユニットの交換作業は、なかなか細かい作業が続きます。

……ん?何となく、この金ピカなネジ?は見たことがあるような…?

そういえば、椿さんが最初に出張修理人を取材したときも、何となくこんな部品を見たような気が。試しに中島氏に聞いてみると…

なるほど!また一つ、何となく賢くなった気がしました。

 

そんなことをしている間に、タンクの交換作業も無事終了です。お客様立ち合いの下、しっかりと動作確認をして、今回の修理は完了しました。

今回も、お疲れ様でした!

お客様の予測も的中!円筒研削盤のベアリング交換

以前も修理で伺ったことのあるお客様から、「今度は円筒研削盤のベアリングが切れてしまった」と連絡が入り、2週間前に中島氏が下見に行ってきました。

中島氏の調査結果も、お客様の予想通り「ベアリングが切れていたこと」が原因でしたので、早速「ベアリング」を注文。届き次第での修理となりました。

 

 

まずは、機械とご対面

 

今回、修理することになった機械は、「円筒研削機」と呼ばれるもの。

そういえば、前回の修理のとき、私、この機械を見ていました。「デカい機械だなー」と思っていた、アレでした!

<かなり年季の入った、働きものの円筒研削機>

 

さて、今回はこの機械のどこを開けるのか?というと、
・ワークを掴んで回転させる部分
・ギアを軸を回す機構の部分
この2か所に、どうやら問題があるようです。

<「開ける」部分を強調してみたの図>

 

どうやら、上の写真の左側の機構の中に、切れたベアリングが入っている模様。

そこにたどり着くまでの行程として、いくつかの機構を取り外していく必要があります。そして中島氏が取り出したのが、下の写真です。

<ベアリングが入っている部分を取り外したところ>

 

しかし、これがまたぎっちりと嵌まっていて、なかなか外れない……

手持ちの工具や木材などを使い、何とか分解しようと試みます。中島氏が奮闘中に相馬氏が合流し、二人で協力しながらバラシていきました。

<ベアリングが入っている機構と奮闘する中島氏>

 

切れたベアリングとご対面

 

さて、「切れた」というベアリングがどこにあるかというと…?

中島氏が機構を開けると、なんと「ベアリングを構成している球」が転がりだしてきました。いやいや、これ危ないでしょ! ということで、椿さんはそれを拾うお手伝いに。

<切れてしまったベアリングのパーツ>

 

<交換用のNew!ベアリング>

ベアリング交換から、元通り組み立てるまで

 

新品のベアリングを入れたあとは、さっき「ぎっちり嵌っていてなかなか取れなかった」機構を、今度は頑張って組み立てていく中島氏。

<新しいベアリングが入って、再び組み立てられる機構>

 

しかしよく見ると、調整ボルトのあたりに、結構な錆が… なんでだろう?お客様に聞いてみると、「結構な頻度で使っている」とのこと。

 

えっ?でも、なぜそんなに錆てる?

 

さらに聞いてみると、「そこは、研磨する時の熱を下げるために、水をかけてるから、しょうがないんだよね」とのこと。そうか、使用するたびに水をかけてるから、錆びやすいのか。

椿さん、ようやくこの機械の仕組みに納得できました。

いずれはちゃんと錆落としも含めたメンテナンスも必要かもしれないけど、今回は「この機械を待っている仕事がある」とのことで、ひとまずはここで試運転して終了となりました。

今回も、お疲れ様でした!

 

今回のお客様はこんなところ

 

<村山機械製作所>

〒275-0024 千葉県習志野市茜浜1-11-11

TEL:047-451-1262

 

主に建設機械の部品や特殊車両(トラックの後ろが上がる車)の部品などの製造を行っている。

 

【お客様の声】

前回に続き、修理をお願いするのは2回目かな?今回は「恐らくベアリングだろう」という予測はできたけど、やはりしっかり修理したいから、お願いして良かったと思う。

だいぶ年季の入った機械だけど、まだまだこれで対応する仕事もあるから、動くようになってホッとしました。今回もありがとうございました。

葛西機工事業部のPR動画を作成しました!

突然ですが、株式会社ケーエスアイ 葛西機工事業部のPR動画を作成しました。

弊社の出張修理人の二人(中島氏&相馬氏)が、弊社の工作機械の修理とは何ぞや?を語っています。2分弱の短い動画ですので、ぜひご覧ください。

 

 

東京都の「緊急事態宣言」が解除されず、なかなか「取材」でうかがうことができない現状ではありますが、中島氏&相馬氏の二人は、着々と修理の実績を積み上げています。そんな出張修理人の声を、動画でお届けすることにしました。
まだまだ落ち着かない世の中ではありますが、そんな中でも頑張っているお客様のために、出張修理人は今日も奔走しています!

何故そんな風に折れたのか?!汎用旋盤の軸交換

ある日の午後、中島氏から1本の電話が入りました。「今度は別のお客様だけど、また汎用旋盤の修理入ったよ。」

そう、つい先日取材させていただいた、「働き者の汎用旋盤」と同じ種類の機械(メーカーは違うけど)が、先日とは違う箇所の修理が必要なのだそうです。

 

しかし、修理予定日を聞くと、残念!その日、椿さんたちは誰も取材に行けません。しかも東京都が再び「緊急事態宣言」の中、お客様は埼玉県だし。

というわけで、今回は中島氏が自ら写真を撮って、後から修理の概要を説明してくれました。

 

 

今回の機械の故障、原因は「プーリーの軸」にあり

 

今回の修理、お客様からは「主軸が回らなくなった!」とうかがっていたそうです。あれ?これどっかで聞いたような気が…

そう!前回の修理記事の汎用旋盤の「プーリーが動いているけど主軸が回らない」と、まったく同じ現象なのです。

そこで実際に中島氏が調査をしてみると、どうやら「プーリーの軸」が折れているらしいことが分かりましたので、中島氏は同じ部品をメーカーから調達して、今回の修理となりました。

 

中島氏はお客様の工場に到着すると早速、いろいろとバラし始めます。まずはギアボックスの上から、折れてしまった「軸」を確認します。

<ギアボックスの中から、折れた「軸」を確認>

 

しかし中島氏、今度はギアボックスの外側にあるプーリーと、もう一つの軸を外し始めたとのこと。後から理由を聞くと「邪魔になるから」。どうやら、今回交換したい「プーリーの軸」のすぐ近くにもう1本別の「軸」があり、これが交換作業の邪魔になってしまうそうです。

さて、2本の軸を外した状態でギアボックスの中を覗いてみると……何となくスカスカな感じになっています。

 

 

やっと!「軸」を交換

 

しかし、ギアボックスの中にあるギアって、長年使われていてもキレイですよね。普段、あまり開けるところではありませんから、油がきちんと差されていれば、ギアがピカピカに光って見えます。

<2本の「軸」を外したギアボックスの中>

 

パッと見た感じではどのギアが何をしているかはまったく分かりませんが、「モーターからのトルクを刃物台に伝える」とか聞いてしまうと、大事な部品なんだなぁと思うから不思議です。

 

さて、いよいよ「プーリーの軸」を交換します。

中島氏は、取り出した「折れた軸」と、注文していた「新しい軸」を並べた図も写真に収めていました。

<2本の「軸」を並べたところ>

 

取り外したプーリーの軸は、途中からスパッとキレイに折れています。ゆがんだ、とか、曲がった、とかではなく、まさに「折れた」軸です。

こんなに太くて頑丈な金属の棒がスパッと折れてしまうとは、ちょっと恐ろしい感じがします。中島氏や社長に聞くと、「金属疲労」とのこと。長年使い続けるうちにこの部分に少しずつ振動が加わり、軸の中心にある金属の棒に「金属疲労」が起こります。すると何かのはずみで、今回のように「バキッ」と折れてしまうことがあるそうです。

とはいえ、滅多に無いケースなのだそうですが……。長年大事に使ってこられた機械ですので、想定外の部分が壊れてしまうこともあるのだとか。

 

軸の交換が終わったところで、後は元通り組み立てて試運転して……で終わりなのですが、実は今回、中島氏のほかに相馬氏も修理に参戦していました。それなりにパワフルな修理だったそうです。

元通りに組み立てたところで、お客様に試運転をしていただきます。故障前の状態で動くことを確認し、今回の修理は完了です。

 

二人とも、お疲れ様でした!

 

今回のお客様はこんなところ

 

<金久保製作所>

〒339-0078 埼玉県さいたま市岩槻区掛7953-6

TEL:048-757-4675

工場内に30台以上の工作機械がある、大きな工場。さまざまな分野への部品提供を行っている。

働き者の汎用旋盤。お客様との共同作業で修理が完了!

ある日、中島氏から「汎用旋盤のバラシが入ったよ」と連絡が。

えーと、「バラシ」って何?

 

今回の修理は、中島氏いわく、「切削ができなくなった理由が分からないらしいから、「バラシ」て、どこが悪いのか原因を探るしかないかなとのこと。

つまり、機械をバラす=分解をするから、「バラシ」と呼んでいるらしい。汎用旋盤を分解して、状況をチェックしようというわけです。

でも一方で、「もしかすると、『キー』と『キー溝』の辺りが問題ってこともあり得るよねー」と、中島氏と社長は事前に分析をしていました。

 

 

修理当日~まずは「故障」の状態をチェック!

 

修理当日の午前中、私も機械とご対面!お客様によると、この機械は40年以上稼働している「頼れる相棒」とのこと。

ここのお客様は、部品の劣化などにより工作機械の調子が悪くなったときでも、ある程度は自分たちの手で部品を作って不具合を解消してきた人たちでした。

しかし今回の場合、故障の原因が分からないということで、修理をご依頼いただいたわけです。

 

到着後、先方から「多分、ギアのあたりだと思うんだよねー」とお話があり、中島氏は「ギアボックス」の中を調べてみることにしました。

 

<機械をバラし始める中島氏>

 

<ピカピカの「ギア」たち>

 

 

修理箇所はここだ!

 

しかしながら「ギアボックス」を開けてみて調べてみても、中島氏は「うーん?」と、うなっている。どうやらここに問題があるわけではないらしい。では一体、どこに原因があるのか……?

 

中島氏は、機械を動かしながら、原因を探ることにしました。

いろいろ見ているうちに、中島氏は「あれ?ちょっとブーリ―の動きがおかしくない?」ということに気付いた様子。

 

<機械と会話する中島氏>

 

プーリーを動かす「ゴムベルト」を外して、プーリーを念入りにチェックしたところ、なんと!なんと!キーが無かったのです。キー溝にはまるキーが、いつの間にか抜け落ちていたようです。

キーはそもそも消耗品なので、削れて小さくなっていくこともありますが、今回はそれが「無くなっていたこと」が原因だったようです。

中島氏と社長の読みが当たりました!

 

 

なんと!お客様に「キー」を作っていただいく

 

本来ならキー溝に合うキーを取り寄せするところですが、お客様の工場内に「キーになる材料」があったこともあり、お客様自身で「キーそのもの」を作っていただくことになりました。慣れた手つきで、あっという間にキーが出来上がりました。さすが、職人さんです。

 

<「キー」を作っているお客様>

 

中島氏は出来上がったキーを、キー溝に埋めてみました。

ちなみにキー溝とは、プーリーの軸に空いている溝のことです。

 

 

そして、試運転。動きますように。

 

先ほどキーを作ってくれた工場の社員さんが試運転した結果、正常に機械が作動しました。パチパチパチ!

 

<修理後の試運転>

 

「汎用旋盤のバラシ」の予定でしたが、少しだけバラしたところで故障の原因が見つかり、お客様との共同作業により、そのまま修理まで進むことができました。

今回も、お疲れさまでした!

 

 

今回のお客様はこんなところ

 

<村山機械製作所>

〒275-0024 千葉県習志野市茜浜1-11-11

TEL:047-451-1262

 

主に建設機械の部品や特殊車両(トラックの後ろが上がる車)の部品などの製造を行っている。

 

【お客様の声】

今までは故障の原因が分かれば自分たちで部品を作ったりして直してきたんだけど、今回はどうにもこうにも原因が分からなかったんだよね。それで以前送ってくれてたDMをみて修理をお願いした次第で。すでにいくつかの受注も抱えていたし、直らなかったどうしようと思っていたのだけど、ひとまず動くようになってホッとしました。

まだまだ現役!年季の入ったフライス盤のモーター交換

今回の修理は、フライス盤のモーター交換です。かなり年季の入った機械のため、銘板には「萩田鉄工所」という文字と「No.1 NEWS TOKYO」とあるのが分かるだけ。

しかし今回の問題は「モーター」であることが事前の中島氏の調査で分かっていました。そこで整備に出したモーターが戻ってきたので「取り付けするよ」ということで、お客様のところへ伺いました。

 

 

モーターの「巻き直し」って?

 

今回の修理、事前に中島氏からこう聞いていました。

モーターの『巻き直し』があがってきたから、取り付けに行くよー

 

は?巻き直し?って何それ?

 

と、頭の中でぐるぐるしたので、ちょっと調べてみました。

 

モーターの巻き直し:モーターの中にある「電磁波を発生させるコイル線」を巻き直すこと。

コイル線は長年使用しているとだんだん劣化し、漏電したりトルクが落ちたりするため、オーバーホールとして「コイル線を新しいもので巻き直す」ということが必要になるのだそうです。

最近はモーターの価格自体も下がってきているので、いっそのこと買い替えた方が安上がりのこともあります。しかし今回のお客様の機械は、同型、同サイズのモーターが入手できないため、「巻き直し」をすることになりました。

 

 

今回のターゲットはこちら

 

さて、私が(道に迷ったため少し遅れて)工場に着くと、すでに中島氏と相馬氏がモーターの取り付け作業に入っていました。

 

<生まれ変わったモーターを取り付けする出張修理人たち>

 

お客様に伺ったところ、この機械は「かなり年季が入っている」とのこと。少なくとも30年以上、もしかするともっと長く稼働している、働き者の機械だそうです。

 

 

モーター取り付け後の動作確認

 

機械全体の大きさからみると、かなり大きなモーターに見えます。しかもオーバーホールが終わっているので、ピカピカに磨き上げられており、これだけ新品のようです。すごくキレイ♪

モーターを取り付けてゴムベルト(3本)を装着したところで、動作確認を始めると…

動きは問題無さそうですが、動き始めるときに何やら「パチン!」という音がします。それほど大きな音でも無いのですが、やっぱり何だか気になる音がベルトカバーのあたりから聞こえてきます。

カバーを外すと、聞こえない。

でもカバーを付けると、動き始めに「パチン」という音。

 

中島氏は、取り付けた3本のゴムベルトを再度確認しました。すると1本だけ、ごくわずかですが他よりも長い気がします。取り付ける時には結構な力で引っ張りましたが、3本並んでいるところをよく見ると、1本だけごくわずかに「ゆるみ」があるように見えます。

 

さて、これはなぜでしょう。

お客様にうかがってみると、「そういえば1本だけ切れたから、それだけ別のところで購入した」とのこと。中島氏も、これで納得したようです。

「ゴムベルト」は同じサイズのものを購入しても、作っているメーカーや作った時期などによって、わずかに長さが違うことがあります。3本とも同じ製品で一緒に交換すると揃うので問題ありませんが、今回のように「1本だけ」が違う場合、どうしてもそこに負荷がかかってしまうので、一番最初に切れてしまう可能性があるそうです。

実際に音がしていたのも、コレ。モーターが動き始めるときに、わずかに長いゴムベルトに、モーターの動きに合わせた「たるみ」が生じてしまい、それがモーターカバーの内部に擦るようにぶつかっていることが原因のようです。

 

とはいえ、3本のうち1本が切れても機械の動作には大きな影響は無いそうなので「今度ゴムベルトが切れたときに考えましょう」ということになりました。

これで今回の修理は終了です。お疲れさまでした!

 

 

今回のお客様はこんなところ

 

<ヤマザキ製作所>

〒340-0217 埼玉県 久喜市鷲宮1-10-21

金属の精密加工を得意とされています。産業用ポンプの部品などを製造しています。

【お客様の声】

ウチはこれまで、別の修理屋さんにお願いしていましたが、そこが廃業してしまい困っていたんですよ。ちょっとしたことなら自分で直せるところもあるのですが、やっぱり慣れている人にお願いする方が確実ですしね。

今回はちょっと急ぎの仕事が入っていましたが、今日直していただいたので、間に合わせることができそうです。助かりました。

 

そんなところに原因が!メタルソー切断機のセンサー修理

今回の修理は、村橋製作所のメタルソー切断機。中島氏によると、どうやら「リミットスイッチ」に問題があり(これは数日前に調査済)部品を調達できたので交換修理をするとのこと。さっそくカメラ片手に取材させていただきました。

 

 

今回のターゲットとご対面

 

今回の機械は、村橋製作所製のメタルソー切断機。実はこの「村橋製作所」という会社はすでに無いので、実際に機械に取り付けられていた「リミットスイッチ」と同じもの(市販品)を取り寄せていました。

工場の中はNC旋盤やマシニングなどが所せましと並んでいますが、社長曰く「長さが決まったネジを加工するときは、切断機で部材を一定の大きさに切りそろえておくと、加工時間が早い」とのこと。

というわけで、「早く直してよ」というご要望でした。

 

実際にターゲットとなる機械はこちら。村橋製作所製の「GREAT CAPTAIN」を改造したものです。

<リミットスイッチの交換を始めようとする中島氏>

 

 

リミットスイッチは交換したけれど

 

さて、今回の中島氏。リミットスイッチの交換はサクッと終わったようです。

<新旧2つのリミットスイッチ>

 

が、なぜか「ルーチン通りの動き」をしない、GREAT CAPTAIN。あれれ?ということでいろいろ調べてみることにしました。

 

中島氏によると、「GREAT CAPTAIN」は、切断する機構を持つ機械のことで、見た目は一体型に見えますが、実際にそこへ部材を送り込んでいる部分はあとから改造されたもの。そもそもこの機械を製造したメーカーもすでに無いですし、いつ誰が改造したかも分かりません。つまりこの機械への修理は、「いつも手探り」なのだそうです。

 

 

リレー方式?シーケンサー方式?

 

そもそもこの機械、部材を送り込む部分は「シーケンサー方式」という仕組みで電気制御されています。しかし10年ほど前までは、「リレー方式」という仕組みになっていたそうです。

中島氏は、現在の「シーケンサー方式」を見慣れているとのことですが、どうやら今回の修理は、この辺に問題があるのでは?とのこと。そこで中島氏は、機械と会話を始めました。

 

シーケンサー上の配線をいろいろ変えてみながら動作確認をくり返しますが、なかなか思うような組み合わせがありません。そもそも、誰でもが簡単に触れるものでも無いため、いつの間にか配線が変わるということも考えにくいようです。

 

…と、中島氏はあることに気付きました。

 

一応動くけど、決められた動きをしない?

 

先ほど交換した「リミットスイッチ」、このセンサー部分が取り付けられている部分に、もう一つの小さなセンサーのようなものがありました。しかし、「普通ならこの辺にある」というポイントから、少し位置がズレていたことに気付きました。

「もしかして、これ?」と、もう一つの小さなセンサーを数センチほどずらしてみました。

 

すると…なんと、本来の動きが!

 

問題はここかー!!

 

今回の修理は、「リミットスイッチ」も反応が悪くなっていましたので、新しいものに交換しました。さらにもう一つのセンサーの一がズレてしまっていたので、それを元通りの位置に固定するという、2段階の修理となりました。

では、なぜ「もう一つのセンサー」の一がズレていたのか。それは、お客様の方で「掃除したときにちょっとズレた?」ということだったようです。

しかし中島氏によると「これも、よくあること」なのだとか。

「そんな気は無いけど、ぶつけてしまって壊れた」とか「ちょっと振動を与えたら動かなくなった」ということは、こうした工作機械に限らず、日常でもよくありますよね。今回はこうしたことが原因で、「一応動くけど、くり返し同じ動作をしない」というものでした。

それでもお客様のご要望通り「以前と同じ動き」ができるようになりましたので、今回の修理は終了です。お疲れさまでした!

 

今回のお客様はこんなところ

<小林製作所>

この機械も結構古いからね。直ってくれたのは良かった。ウチにあるNCとかでも長い部材からの加工はできなくは無いけど、やっぱり時間がかかる。必要な長さに切断しておくと、加工もやりやすいし時間も断然違う。だから無いと困る機械なんだよね。

 

魔物が棲むNC旋盤!?一筋縄ではいかないギアの修理-後編-

今回は、中村留製のNC旋盤の修理、後編です。

RPGでいう「ラスボス」のような存在感を放つ今回の修理箇所、「軸およびシュパンリング」は、修理開始から数日後、やっとその全貌をあらわしました。

 

 

「軸」に食いついてしまった「シュパンリング」

 

修理1日目は椿ワークスが取材できましたが、その後の模様は、相馬氏から送られてくる写真とコメントが頼り。3日目の午後、相馬氏から「ギアが外れました!」とのことで、写真とコメントが送られてきました。

 

問題となった「軸」と「シュパンリング」の全貌です。

 

<軸とシュパンリングの位置関係>

 

<シュパンリングが入ったギアを取り外したところ>

 

 

なぜ軸に「食い込んでしまった」のか

 

実際のところ、軸からシュパンリングが組み込まれたギアを取り外すためには、かなりの工夫が必要だったようです。中島氏はこの辺りを想定していたからか、予め「特注部品(工具)」も発注していました(詳しくは、前編の一番下の画像を参照)。

では、なぜ「取り外すのが難しい」ものだったのか。その理由は大きく2つありました。

1つは、軸はもともと「テーパー」という形状であることです。直線ではなく、わずかですが両端の太さが違いますから、その上にリングを通した場合、ある程度のところまでくると自然に止まります。しかし想定外の力などが加わると、リングは軸に食い込んでしまいます。これが「食いついた」という表現になっていました。

もう1つは、軸とシュパンリングの間に、潤滑剤である「オイル」が無くなっていたことです。工作機械の中の部品は、一部の電気系統を除くと金属でできているものがほとんどですから、それぞれのすき間にはオイルなどの潤滑剤があります。これが無くなると金属同士で摩擦が起こり、上手く動かなくなってしまうのです。しかも、この機械はすでに30年以上稼働しています。メンテナンスを行う時にも「中を開けてオイルを足す」という箇所でも無いので、自然と「オイル切れ」を起こしてしまっていたのでした。

 

今回のケースでは、

1.ギアに必要以上の力がかかり、シュパンリングを押し込んでしまったこと

2.本来あるはずの「オイル」がなくなり、ギアが動かなくなってしまったこと

この2つが原因で、NC旋盤本来の動作ができなくなっていました。

 

 

本来の動作に戻すために

 

シュパンリングとは、ギアの内側につけられた「リング」のことです。本来、ギアにフタをして抑えると、このリング自体が内外に膨らむようになっており、ギアが軸にしっかりと固定されるという仕組みです。

 

ここで、シュパンリングの動きを整理してみます(後日、中島氏に詳しく教えてもらったことは、とりあえずナイショです)。

 

<シュパンリングの本来の動き>

※本当はもっと複雑ですが、分かりやすく簡略化してます(実は、ここまでしか理解できない…)

本来なら、上のイメージ図の中にある「実質的な軸が通るスペース」は少しスキマが空いていて、潤滑剤であるオイルがあるはずです。しかし実際のシュパンリングと軸との間にはスキマが無く、オイルも乾いてしまっていました。

今回の修理では、軸に食いついてしまったシュパンリングをギアごと外すことができましたので、もう1つの問題である「オイル」を解決する必要があります。

 

上の写真でも分かるとおり、軸もピカピカですし、シュパンリングもキレイに乾いてしまっています。

中島氏と相馬氏は、ここにたっぷりとオイルを補充したそうです。

 

 

さて、今回の修理。作業を始めたときは「ラスボスにたどり着くためのRPGみたい」と思ってしまいましたが、RPGと違うのは「ラスボスを倒したから終わりでは無い」ということ。

 

つまり、数日かけて分解したNC旋盤、組み立てにもそれなりに時間がかかったわけです。

最後はお客様に動作確認をしていただき、修理は完了です。

 

お疲れさまでした!

 

今回のお客様はこんなところ

 

<有限会社 相原製作所>

〒343-0115 埼玉県北葛飾郡松伏町大字上赤岩1683

TEL:048-991-8984

 

<お客様の声>

 

今回の修理は「大がかり」というか、中島君も手探りではあるようだね。やっぱり時間もかかったし、どうなるかなと思ったけど、直って良かった。機械が動くようになるのは、助かります。