魔物が棲むNC旋盤!?一筋縄ではいかないギアの修理-前編-

今回は、中村留製のNC旋盤の修理です。

NC旋盤の修理…は中島氏の修理実績の中でも多い方なのですが、今回は中島氏も初の大がかりな修理になるだろうとのこと。「多分、1日では終わらない」という予測通り、実に一週間近くかかった修理となりました。

 

 

まずはNC旋盤とご対面

 

今回の修理は、ケーエスアイにとっても古くからのお客様、埼玉県松伏町の相原製作所様です。実は、今月の初めにも別の機械の修理(面取り旋盤「メントリー」チャック爪の交換)で取材させていただきました。

今回はまた別の機械、NC旋盤の修理です。

事前に中島氏に聞いたところ、「NC旋盤の奥の方、ターレットの軸の部分にはまっている部品(後に「シュパンリング」というものであることが分かりました)が、軸に食いついている」とのこと。

 

軸に食いつくって何???

 

という疑問符を浮かべながら相原製作所様に着くと、中島氏は機械と会話していました。

<機械と会話する中島氏>

 

工場の入口近く、先日写真を撮らせて頂いたNC旋盤が今回修理する機械なのですが、ちょっと大掛かりになるので人手が欲しいことと、せっかくNC旋盤の内部構造も見られることから、相馬氏も一緒に修理するのだそうです。

 

 

初めて見るNC旋盤の内部機構は、疑問がいっぱい

 

それでは!と、私もNC旋盤の中の覗き込んでみました。が…

軸ってどこ?どこが「食いついて」いるの?

表側と裏側の両方から覗き込んでも、まったくもって分かりません。

それは何故か。

答えは、「普段、人の目に触れることのない、ずっと奥の方にある機構だから」です。

<表側と裏側から修理箇所の周囲を眺めたところ>

 

何でしょう、この「今回の修理箇所」に漂う、ラスボス感

修理箇所(=ラスボス)までたどり着くために、

さまざま困難(=必要な箇所の分解)を乗り超えなくてはならず、

そしてしっかり修理しないと(=ラスボスを倒さないと)終わらない、今回の修理。

私自身はそれほどRPGが好きというわけではありませんが、頭の中にはついつい、こんなイメージが浮かびました。

この時点ではまだ、修理すべき箇所がどこなのかまったく見えませんし、実際の形や大きさも想像できませんでした。それゆえに「RPGでいうところのラスボス?」というイメージが浮かんできたのです。

 

 

慎重かつ丁寧に、悩みながら機械を分解

 

中島氏と相馬氏は、見えている部品や電気系統の配線などを、一つずつ外していきます。もちろん、表側からだけでは外すことができず、裏側に回って内部の構造を確認しながら、慎重に作業を進めます。

<NC旋盤の内部構造をくまなく確認しながら分解していく中島氏>

 

しかし、今回の修理は非常に手のかかる修理です。1日目も日が暮れようかというころ、やっと修理箇所の全体を覆っている、カバーが外れました。

<NC旋盤内部を分解、カバーを外したところ>

 

 

なんですと!?そうなのか。これは確かに大がかりだ。

実は翌日と翌々日、私は取材に同行させていただくことができなかったので、相馬氏に写真を撮ってもらいながら、状況を教えてもらいました。

私が行けなかった間、お客様の高速切断機をお借りしたり、工場内の手動の切断機をお借りしたりしながら、必要な工具もその場で作りつつ、作業を進めていたそうです。

 

<作業行程のダイジェスト>

 

今回のケースのように、出張修理人たちは単に「部品交換します」とするのではなく、

  ●どこがオカシイ?

  ●どのような使われ方をしている?

こうしたことをお客様と相談しながら、そして機械たちとも会話しながら、集中力と発想力で解決していきます。

 

修理開始から数日後、やっと全貌が見えてきました。

 

この続きは、後編で!

なぜ根元からバッキリと?面取旋盤のチャック爪交換

今回は、高松機械製メントリーの「チャック爪交換」です。機械全体の大きさはそれほど大きなものではありませんが、面取り加工を行う専用の旋盤です。チャック爪ってちょっと変わった形をしていますが、そもそも何のためにあるのかを聞きながら、修理に同行させてもらいました。

 

 

面取り旋盤だから「メントリー」

 

今回の修理は、ケーエスアイにとっても古くからのお客様、埼玉県松伏町の相原製作所様です。私実は、15年ほど前にもこちらの工場にお伺いしたことがあります。その時に社長さんにお会いしたのですが、第一印象が「大きい人だなぁ」だったということはナイショです。

 

修理の予定が決まったとき、中島氏からは「高松機械のメントリーのチャック爪交換」と聞いていました。

はて?「メントリー」という名称は初めて聞いたような気がする。試しにWebで検索してみると、ありました!

 

面取り旋盤 メントリー

 

…え?

うーん、「初めて聞いた人にも伝わりやすいネーミング」と言えなくもない?

機械の名称に若干の衝撃を受けながらお客様の工場に到着し、実際のメントリーと初めてのご対面。

<高松機械工業製 メントリー T850K>

 

今回は、機械の一番後ろの「チャック機構」にある「チャック爪」を交換するということです。

 

 

「チャック爪」とは、そもそも何をするものか

 

中島氏は早速、チャック機構を分解し始めます。

<チャック爪を取り外したところ>

 

チャック爪は2本で1セットなのですが、そもそもどのような働きをするものなのでしょうか。中島氏に聞いてみました。

 

 

 

 

<チャック爪からの力の伝わり方>

なるほど!この変わった形状には、そういう意味があったのか!

ふむふむ…と一人で分かった気になっている横で、中島氏は新しいチャック爪と交換していきます。

<新しいチャック爪を取り付けていく中島氏>

 

 

チャック爪は何故折れたのか

 

さて、取り外したチャック爪をみると、2本のうち1本が固定用のネジ穴の部分でバッキリと折れています。

その理由を中島氏に聞いてみました。理由はいくつかあるようですが、今回は以下の2つの理由が考えられるそうです。

 

まず1つは、経年変化によるもの。チャック爪の先端には、ぎゅーっと押し付けるような力がかかります。ちょうど、頭の上においた壺を下から持ち上げるようなものなので、どうしてもその根元には力がかかります。これをくり返すことで根元が脆くなっていたのかもしれません。

 

もう1つは、必要以上の力をチャック爪にかけてしまったこと。チャック爪は根元の穴に短い棒を通すような形で固定されていますので、必要以上に力を加えると、先端方向へ力が逃げなくなってしまい、根本にも圧力がかかってしまいます。もしかすると、チャック爪全体の中でもこの「穴」の部分は金属が少なくなっているため、折れてしまったのかもしれません。

 

そんな話をしているうちに社長さんが様子を見に来られたので、動作確認をしていただきました。

<中島氏と社長さんとで動作確認をしているところ>

 

今回の修理はこれで完了です。お疲れさまでした!

 

 

ついでと言ってはナンですが、工場の中を見学

 

修理を終えた中島氏は、さっさと次のお客様のところへ行ってしまったのですが、社長さんが工場の中を案内してくださいました。

工場の中には、NC旋盤が10台以上、ターレット式旋盤2台、6軸加工機などの大型機械、現在は使用されていない機械が数台など、たくさんの工作機械がずらりと並んでいます。

これまでにも「取材」という名目でいくつかの工場にうかがいましたが、初めてみたものがあります。これ ↓

<NC旋盤の中から自動的に切子を排出するコンベアー>

 

それから、かつて中島氏が「改造した」という、今井機械製のターレット旋盤もありました。これ ↓

<38型ターレット式旋盤の改造部分>

 

ここは元々こういう形の「ボタン」では無かったそうですが、より使いやすいようにと中島氏が設計して、改造したのだそうです。

へぇ、ウチはそんなこともできるのか。と、自社を見直した1日でした。

 

 

今回のお客様はこんなところ

<有限会社 相原製作所>

〒343-0115 埼玉県北葛飾郡松伏町大字上赤岩1683

TEL:048-991-8984

うちとケーエスアイさんは先代からの付き合いだから、結構長いよね。実際、ケーエスアイさん経由で導入した機械もありますし、中島君に改造してもらったものもあります。工作機械の修理は自分たちでやることもあるけど、中島君の拠点はウチからもそう遠くないから、何かあったときにすぐに来てくれるのは助かるかな。朝一番で来てくれると、もっと助かるけどね(笑)

 

 

NC旋盤 ポンプ取り付け台もグレードアップが必要です

今日の修理は、中村留製のNC旋盤 SC-200 のポンプ取り付け台の交換とポンプ位置の調整です。実はこの数日前、ポンプ自体も交換していました。今回はポンプを固定する「取り付け台」を交換します。

 

 

工場の奥深くに置かれたNC旋盤

 

NC旋盤自体を動かすポンプの下には、それを取りつけるための台となる部品があり、ポンプは新しいけどこの「台」の部品は古いまま、という状態。しかし交換したポンプがパワーアップしたものだったため、古い「台」では少しガタが来るとのこと。そこで新しいポンプに合わせた「台」を発注し、交換することになりました。

さて、実際に交換作業が必要なNC旋盤は…工場の一番奥のスペースにありました。

このNC旋盤、壁際に設置されており、すぐ横にはバーフィーダーも置かれているため、作業用のスペースがあまりありません。大丈夫なのか?

…そうだね。数日前に「ポンプ」自体を交換しているなら、大丈夫か。

というわけで、中島氏がNC旋盤の裏側に入り込む様子を激写。

<NC旋盤の裏側のスペースに入り込む中島氏>

 

 

 

今回交換するパーツはコレ

 

さて、実際にどこを交換するのか?と思いながら覗き込んでみると…

え?そこ?手が入るような場所なの?

<機械の裏側 交換する部分>

 

しかし機械の脇に胡坐をかいて座り込んだ中島氏は、サクサクと作業を進めていきます。

途中、いったん「旧」を取り外したところで、「新」と並べてみました。

<交換したポンプのサイズに合わせて少し大きくなった「取り付け台」>

 

キレイさ…はともかく、確かに少しですが大きさも違います。

でも、どうしてこれを交換することになったの?

というわけで、今度は新しい「台」のパーツを、ポンプの下に設置していきます。

しかし、中島氏の手元は狭くて暗い。作業用のライトの光を頼りに、パーツと床面とをネジで固定していきます。

 

<モーター下の「取り付け台」が新しくなったところ>

 

 

配電盤を開けて何するの?

 

さて、モーターのパーツ交換が終わったところで、中島氏は同じNC旋盤の配電盤の扉を開けて何やら作業を始めました。

<配電盤の扉を開けて作業を始める中島氏>

 

どうやら、この中にあるパーツを1点、交換する必要があるようです。

配電盤の中は初めてみましたが、すごい数のケーブル!!

さすがにここの写真は撮れませんでしたが、色とりどりのケーブルが無数に収まっています。どこに何がどうつながっているのか、私にはさっぱりわかりません。交換するパーツも、どこに埋まっているのやら。

しかし中島氏は、悩むことなく、正確に目的のパーツを取り外して交換していきました。

 

さて、今回の修理は中島氏だけかといえば、そうではありません。ちゃんと相馬氏も中島氏の助手として作業していました。ただ、裏側が狭くて入っていけないので、必然的に作業は中島氏がメインで進めた、という状況のようです。

<SC-200の前に立つ相馬氏>

 

今回のお客様はこんなところ

<有限会社 渡辺精工>

〒132-0025 東京都江戸川区松江1丁目11‐10

TEL:03-3654-2220

さまざまな精密機器部品を製作している工場で、製作したバルブ製品は医療機器、建設機械、電車や新幹線(内装)などに使用されています。

ケーエスアイさんとは、先代の頃からの長い付き合いかな。うちにあるNC旋盤たちは全部中村留製だし、これらを導入したのも全部ケーエスアイさん経由なんだよね。中島君はターレットやボール盤も修理やパーツ交換をしてくれるし、ちょっと調子が悪くなったらすぐに来てもらえるのは良いよね。近いからというのもあるけど、ウチがどんな加工をしているのかも分かっているから、お願いしやすいんだよね。