大きな機械の小さなパーツ シャーリングのオイルタンク交換

今回の修理は、「シャーリング」。

以前も別のお客様の工場で「シャーリング」の修理を行いましたが、今回は修理箇所が違うとのこと。さて、出張修理人は今回、何をどう修理してきたのでしょうか。

 

 

修理数日前 下見にて「シャーリング」とご対面

 

今回の修理、実は当Webサイトを通じてご連絡いただいた、新しいお客様です。

「出張修理人の軌跡」をご覧いただいた機械商社の方から、「栃木県のとある工場にあるシャーリングの動作がオカシイので、見てくれないか」とご連絡をいただきました。

シャーリングは本来、「手前→奥」の順番で刃が動くはずなのですが、 どうやら手前が動いていないとのこと。恐らく「クラッチが動いていない」可能性が考えられました。そこで、中島氏が下見としてお客様の工場に伺いました。

中島氏は、お客様の工場に到着して機械とご対面。どうやら、オイルタンクが寿命を迎え、機械全体にうまく油を供給できず、クラッチが動かなくなっているようでした。

 

 

何が原因でこうなった?

 

シャーリングのオイルタンクは、機械全体の大きさからすると小さ目のパーツですが、機械全体へオイルを供給するプロパーユニットは、機械にとっては大事なパーツ。機械そのものは電気で動きますが、オイルがしっかりと流れないと、どこかで目詰まりを起こしてしまいます。

必要な時にオイルが供給されなければ、機械は摩耗し、壊れてしまいます。オイルを血液に例えるなら、オイルタンクは体全体に血液を送り出す、心臓のような役割があるのです。

今回のシャーリング、何とかポンプを回すと、一応オイルは流れます。しかし、プロパーユニットから出ていくのは、ほんの数適。これでは、機械の右側で回っている「軸」へ、十分なオイルを供給することができません。

<いつ見ても「デカい!」と思わせるシャーリング>

 

そもそもこのシャーリングはかなり働き者の機械で、ほぼ半世紀くらいは働いてきたようです。しかしこまめに動かしていないとオイルが詰まってしまい、上手く流れなくなります。今回の原因はこのあたりにあるようです。

一応、少しずつはオイルが供給されてはいますが、今の状態のまま修理しない場合、軸やスライドが摩耗し、焼き付いてしまう可能性があります。つまり、機械そのものが寿命を迎えてしまうわけです。自動車でいえば、オイル無しで運転しようとするのと一緒。オーバーホールするという手もありますが、恐らく高級外車くらいの費用がかかってしまいそうです。

中島氏は「目に見える問題箇所はまず直そう」ということで、新しいオイルタンクを注文。入荷したらすぐに修理することになりました。

 

 

修理当日 手先が器用って素晴らしい

 

さて、オイルタンクを注文してからおよそ2週間、やっと入荷したタンクを持って、中島氏は再びお客様の工場へ向かいました。

ところで、このシャーリングは前述の通り、すでに半世紀くらいは働いている機械です。まったく同じポンプを入手することはできませんでした。

しかしここからが中島氏(出張修理人たち)のスゴイところ。シャーリングのメーカーからではなく、まったく別のパーツメーカーから、ほぼ同サイズで同等の機能を持つポンプを取り寄せていました。

というわけで、サクサクと修理を進めていく中島氏。

機械全体は使用感が満載なのですが、新しいタンクとともに交換するパーツはとてもピカピカ!「新品感」が漂っていました。

<機械全体へオイルを分配するプロパーユニット>

 

オイルを分配していくプロパーユニットの交換作業は、なかなか細かい作業が続きます。

……ん?何となく、この金ピカなネジ?は見たことがあるような…?

そういえば、椿さんが最初に出張修理人を取材したときも、何となくこんな部品を見たような気が。試しに中島氏に聞いてみると…

なるほど!また一つ、何となく賢くなった気がしました。

 

そんなことをしている間に、タンクの交換作業も無事終了です。お客様立ち合いの下、しっかりと動作確認をして、今回の修理は完了しました。

今回も、お疲れ様でした!

扱いを間違えるととても危険?シャーリングの調整

ベンディングロールの調整に続き、今度は工場の奥に設置された、「シャーリングの刃の調整」です。
前回おうかがいした時、工場の方は

「金属の板を切断すると、一部にかなりの【バリ】が出る」

と仰っていました。中島氏の見立てによると、「刃の固定がわずかにゆがんでいるため、金属の板をささえている部分とのスキマが均一になっていない」とのこと。今回はここを調整します。

 

シャーリングの調整前の下準備

 

さて、本日も「シャーリング」とご対面。しかし、大きいなぁ…。万が一動いているときに手を出したりすると、とんでもない大惨事になることは明らかです。

中島氏と相馬氏は、ちょうど良い位置に「刃を固定している箇所」が来るように、丁寧かつ慎重に作業を進めていきます。

<「刃を固定している構造」を合わせているところ>

 

ところでこの機械、けっこう年季が入っているように見えますが…少なくとも40年以上は稼働している機械ということが分かりました。機械操作の注意書きが貼りつけられていますが、こんな感じです。

<取り付けらている注意書きのプレート>

 

こういう仮名遣い、今では見ませんよね。昭和50年代くらいまでに作られた工作機械には、今でもこうした仮名遣いのものが取り付けられているのだそうです。

 

刃を固定するネジたちをゆるめていく作業

 

中島氏と相馬氏は機械の裏側に回り、シャーリングの刃を固定しているネジたちを少しずつゆるめていきます。裏側はとても暗いので、相馬氏が照らすライトがなければ手元が見えません。なかなかのチームプレーです。

<相馬氏が中島氏の手元を照らしているところ>

 

ところで、なぜ新聞紙が挟まっているのでしょうか?
それは、お客様から「新聞紙位のスキマを開けておいてね」というオーダーがあったからです。
現在の問題は「部分的にひどいバリができる」こと。つまり、板を置く台の1辺と刃とのスキマが、平行ではないことが問題のようです。

でも、「刃が平行でないこと」と「バリができる」ことの間に、どのような問題が???

中島氏に聞いてみました。つまりこういうことのようです。

 

 

<刃が平行でないとどうなるか>

 

というわけで、「刃を固定しているネジ」の締め具合を調整する必要があります。まずは「ちょうど良く」締め直すために、一度すべてのネジとナットを、少しずつゆるめていきました。

 

「押し」と「引き」で固定しているネジ

 

さて、ゆるめているネジを良く見ると、ネジの頭部分が見えているものと、ナット部分だけが見えているものがあります。なぜ???

なるほど!両方からの力で、このとても重たい「刃」を固定しているわけか!

このシャーリングは、4.5mmまでの金属の板を切断できる機械のようです。刃の動きは、上からまっすぐスパーンと落ちてくるのではなく、正面右から正面左の方向へ、斜めに刃が下りていきます。最初に刃が下りてくる部分と後から刃が下りてくる部分には、わずかですが時間差ができます。

固い材質や厚みのあるものを切断し続けていると、後から刃が下りてくる方に負荷がかかり、板を支える台と刃との間にスキマができてくるのだそうです。すると今回のように「部分的にひどいバリができる」ということになります。

こうした機械は時々、刃を固定しているネジを締め直し、「押し」と「引き」との力の強さを調整していく必要がある、ということでした。

 

「新聞紙1枚分のスキマ」を維持するのは難しい?

 

何度か、全体のネジとナットの締め具合を調整し、全体的に

「だいたい新聞紙1枚分のスキマ」

をつくることができました。ただものすごく厳密にいうと、すべてを平行にし、絶対に動かないように固定するのは難しいのだそうです。

シャーリングの刃は簡単に交換できるものではありません。また、切断する金属板の材質や形状によっては、刃にかかる負荷は均一ではありませんので、使用しているうちにわずかな「ゆがみ」が生じます。固定するネジにも負荷がかかり、締め具合にも変化が生じたりしてしまうのだそうです。

ということを、シャーリングをよく使う工場の方に説明しつつ、ためしに金属の板を切断するところも、見せていただきました。

スパーンと金属の板が切断されるところは圧巻!

切断面を見ながら、これくらいは大丈夫!」というお墨付きをいただき、今日の修理(というより調整)は終了です。

 

今回のお客様はこんなところ

 

<名和工業 株式会社>

〒132-0025 東京都江戸川区松江6丁目4-21

TEL:03-3653-7491

集塵機・空調ダクトの製作から、取付工事、塗装工事、配管工事、足場工事まで、大規模工場内の「ダクト」に関することならあらゆる行程に対応している工場です。いわゆる「設備」に関する部分に対応しているため、お客様の施設に合わせた設計から一貫して対応しています。