もはや天然記念物?!転造盤のオーバーホール

転造盤のオーバーホールを久々に承りました。

弊社の創業者は、もともと都内にある転造盤のオーバーホールを行う会社で修業をした後、独立しました。その流れもあり、現社長も業務引継ぎ後、10年近く転造盤のオーバーホールを行っていました。

現在はどんな機械でも出張修理をする会社として、年々お客様が増えてきておりますが、当然、過去記事のとおり転造盤の出張修理も承っています。

 

オーバーホールとは何ぞや?

最近、関東周辺でこの転造盤のオーバーホールを依頼できる企業がないというお客様が急増している模様。「オーバーホール」という言葉は非常に便利ですが、一方であいまいな言葉でもあります。「オーバーホールお願いします。」と言って業者に依頼したとしても、その後にどのような過程で実際に何を行ったのかは全くのブラックボックスで、よく分からないというのが現実ではないでしょうか。

「ただ分解して、掃除しただけ?」

「見た目は新しいけど、ここの部分本当に交換したのかな?」

「オーバーホールしたはずなのに、すぐ故障!」

「オーバーホール依頼先は、遠い地域にあり、もし故障して修理依頼すれば、旅費だけでかなりの金額」

等という声が聞かれます。

 

一方のオーバーホールができる技術を持つ会社では

「ただオーバーホールって丸投げされても……、どうやって見積を出せばいいの?」

「とりあえず言われたことはやったけど、これで良いのだろうか」

「(ある機械の内部について)確認を取りたいが、お客様に理解してもらえない」

といった声があるのも事実です。

 

こうした背景から、弊社では「お客様とともに行うオーバーホール」をコンセプトとしてオーバーホールを承っています。

 

 

ケーエスアイにとってのオーバーホール

弊社社長は、過去に自ら作業着を着て実際にオーバーホールを行い、その実績は十数台を超えています。現在でも社長オーバーホール済みの転造盤が顧客で稼働しています。その経験から、転造盤のオーバーホールには、全般的に見て約50項目の点検整備項目があることが分かっています。それらについて、お客様と綿密な打ち合わせをしながら、顧客とともに実際のオーバーホールを行っていく、という考えです。

分解・清掃・組み立て・塗装はもちろんですが、油圧、主軸、電気配線など、約50項目においてお客様と綿密な打ち合わせを行います。

「塗装はいらないかな」

「油圧は静かだから大丈夫かな」

「自分で電気部品は交換しているから、手は付けないで」

等のご要望をうかがいながら、

「なんかピッチがずれる。」

「圧力が安定しない。」

といった原因不明の故障の調査

「この電気部品がないけど、別の後継部品を取り付けたい。」

「この操作部分をこういう形にしたい」

「とにかくばっちり全交換」

といった改造、改良にいたるまで、あらゆる項目についてお客様と相談の上、詳細なオーバーホールの計画を練ります。そして、お客様が「今、本当に望んでいるオーバーホール」の成功した姿を頭に描きながら弊社協力工場に依頼し、オーバーホールの監修を行います。

実際に作業を依頼してから点検や作業の途中で追加の交換部品や作業が生じた場合でも、お客様が理解できるまでしっかりと説明し、納得するまで話し合います。さらには、弊社は出張修理を得意としていますので、しっかりとしたアフターフォローも行えます。これが弊社の強みです。

 

で、今回のオーバーホールをご紹介

今回承った転造盤のオーバーホール。きっかけは「なんかピッチがずれて、製品が安定しない」というものでした。「オーバーホールしてほしいが、どこにも頼めない、助けてほしい」との声を聞き、早速訪問し、件の転造盤を確認しました。

 

今回オーバーホールが必要となった転造盤

 

そして、綿密な打ち合わせの結果、

・分解清掃組立

・塗装はしない

・油圧は既存のまま

・主軸部の部品は交換

という、大枠での方向性が決まりました。さらにマニアックな打ち合わせも行いながら、主軸部分を中心とした、延べ20項目を超える中規模オーバーホールを行いました。

※ちなみに……50項目すべてに対応する大規模オーバーホールだと、新品同様の転造盤に生まれ変わります

交換のために取り出した部品たち

 

分解して、じっくり点検してみると…

オーバーホールが始まって1か月が経過したころ、協力工場から、当初の予定には無かった作業の提案がありました。

「油圧ポンプが老朽化してわずかに空気が入り込んでいる。このままでも動作はできるけど、近い将来、圧力が安定しなくなるので交換を推奨する」

「電気部品の一部に旧規格の物が取り付いている。今後のことを考えたら、今のタイミングで新規格のものに変えても良いのでは?」

とのこと。予定には無かった部品の交換作業が、2か所必要となりそうです。

全分解された転造盤

※今回オーバーホールを行った実物は異なる転造盤ですが、これと同様にすべて分解しました

そこで弊社は、この部品が壊れるとどのように製造に影響が出るのかを説明すると同時に、いずれ弊社出張修理で行った場合に必要な期間や費用をご提示しました。その結果、今回は2つとも交換することとなりました。

もちろん、上記の部品交換を行わず、オーバーホール完了後は完全に部品が壊れるまで使用し、いずれ弊社で交換作業を行うという選択肢もあります。しかし、

●今回部品交換が追加になってもお客様の予算内だった

●いずれ壊れることが分かっているならまとめて修理しておきたいというお客様のご希望があった

こうした理由で、今回はオーバーホール+2つの部品交換を行いました。

オーバーホール作業終了後、実際にお客様に材料、工具などを持ち込んでいただき、試運転を行いました。約100個の材料を加工していただきましたが、製品は安定した仕上がりとなり、お客様も満足されたご様子です。また実際の費用も、作業項目を限定して行ったためリーズナブルに終えることができました。

 

メジャーな技術から「ニッチな技術」へと様変わりした、転造盤オーバーホール

転造盤は古くから国内に存在していて、ネジやローレットといった加工を行うために必要不可欠な機械です。30年前は、この機械の修理やオーバーホールを行う方々が沢山いましたが、職人さんの高齢化や後継者問題等の結果、関東ではあまり見かけなくなりました。

(おそらく関東で、転造盤のオーバーホールの知識を習得している現役は、弊社社長だけかもしれません。)

弊社は今年で設立40年ですが、社長はまだ50代前半で、この業界では若手に属していますので、まだ数十年は対応できます。(弊社が倒産廃業しなければの話ですが)

 

天然記念物を保護する気持ちで、是非お気軽にご連絡ください。

 

 

 

これは何でしょう? NC旋盤の〇〇を交換

これは、とあるNC旋盤の主軸部分です。なかなかはっきりとお見せするのが難しい部分ではありますが…今回はここの修理の模様をお伝えします。

 

最近、NC旋盤の主軸ベアリング交換作業が続いています

 

毎日休まず、皆さんの仕事のために頑張っているNC旋盤。しかし、それだけ頑張っていると…だんだん、いろいろな所が疲れてきます。今回は、そんなNC旋盤の「主軸ベアリング交換作業」のお話です。

 

金属を切削加工するNC旋盤は、切削屑(切粉)を排出します。でも切削する金属の種類によって、出てくる切削屑(切粉)のカタチも違います。

  ステンレスやアルミ:シュルシュルっととぐろを巻いたような切粉

  真鍮:棘のような切粉

  鋳物:粉のような切粉

などなど…。

傍から見ていると「おぉ!どんどん削れていく!」と感動すら覚えますが、実は機械を分解すると、「なぜこんなところに!」という場所に切粉が入り込んでいることがよくあるそうです。

もちろん、切粉を一まとめにする仕組みもありますが、工作機械の表面にくっ付いていたり、NC旋盤やマシニングの前面ドアの隙間などにも入り込んでいたりします。実際、毎日修理している中島氏とほかの従業員の作業着は、洗濯すると切粉がポロポロ落ちてくるのは日常茶飯事です。

 

さて、いろいろな所に顔を出してくる切粉ですが、当然ながら主軸の機構内にも入り込んでくるのです。また、主軸は工作機械が稼働している間は回転し続けていますので、当然ながらベアリングも摩耗してきます。たとえば

  主軸が発熱した

  ガラガラ、シュルシュル、といった異音がする

  何となく、主軸が重たい感じがする

こういった違和感を覚えるときは、主軸やベアリングのあたりに切粉が入り込んで摩擦が起こり、摩耗している可能性が高いといいます(社長&中島氏談)。その場合、「分解して掃除する」という方法で済む場合もありますが、入り込んだ切粉が多いとか、主軸に大きな負荷がかかっているようならば、ベアリングを交換してしまった方が良い時もあります。

切粉が入り込んだからといって工作機械がすぐに停止してしまうことはありませんが、そのままいつまでも頑張って使い続けていると、主軸が固まって回らない!なんてこともあるのです。

 

 

分解、交換、組立という工程は同じだけど…

 

<切粉はどこに?主軸あたりを分解したところ>

 

主軸あたりに切粉が入り込んでそうだな…という場合、まずは主軸の前後部分にある部品を全部分解して、次の写真のように、本体から主軸を引き抜きます。

 

<とあるNC旋盤から引き抜かれた主軸>

 

<別のNC旋盤から引き抜かれた主軸とベアリング>

 

そして、新しいベアリングに交換して、再度組み立てます。NC旋盤により手順は多少違うこともありますが、

【分解する→新しいものに交換する】

という工程は変わりありません。それでも、1台のNC旋盤に中にはいくつものベアリングが組み込まれていることもあり、一筋縄ではいかないことも多々あります。

 

<1台のNC旋盤から次々と取り出されたベアリングたち>

 

そして新しい主軸を取り付けたら、慣らし運転(主軸をから運転させて馴染ませる)を行ったり、ピックゲージで主軸の中心にズレがないかを確認したりして、作業は終了です。

出張修理人の中島氏は、この作業を何度も経験済。疲れてしまったいくつものNC旋盤を生きかえらせてきました。しかしお客様からすると、そうそう見かける光景ではありません。

先日伺ったお客様(数件ありますが、どこかはナイショ)からは、「主軸ベアリングの交換なんて無理かと思ったけれど、出来るんだね。」とか、「こんなにバラバラにして、組み立てられるのか?大丈夫か?って、こっちが不安になったよ(笑)。」、「調子いいよ。ありがとう!」というお言葉をいただきました。

 

せっかく買った工作機械ですから、末永く大切に使って、お客様には(そして工作機械にも)いつまでも頑張ってほしいです!

新しい工作機械がやってきた!搬入までの道のり

少し前のお話しなのですが…
株式会社ケーエスアイでの対面打合せの際、ずっと以前からのお客様の工場に、新しい工作機械が搬入されるとの情報が!

しかしながら、取材に行きたいのはヤマヤマな椿さん、今回もやはりスケジュール的に行けそうにありません。

というわけで、今回も中島氏に自ら写真を撮ってもらい、後からその顛末をじっくり聞いてみることにしました。

 

搬入先は同じ区内のお客様

 

今回、新しい工作機械を購入されたのは、以前も修理記事の取材でお世話になった、株式会社土屋商会様(以下、土屋商会様)です。

古くても大丈夫!マシニングセンターのサーボモーター交換 を参照)

 

土屋商会様では、

●仕事が増えてきた

●さらに増やしたい

●それにはもう少し馬力のある小型の旋盤加工の自動化が必要

という状況があったとのこと。

 

実は、ほぼ同じ仕様の工作機械はありました。しかし、20年選手の機械であり、「そういえば、設置場所もあるよな」ということで、この度、もっとがんばって働いてもらうために、最新式のNC旋盤を入れることになりました。

 

今回のNC旋盤は、北村製作所製の KNC-20G という機械。

 

<今回の新しい工作機械 KNC-20G>

 

「クシ刃旋盤」と呼ばれるシリーズで、小型(省スペース型)でありながら、高剛性・高精度を誇る機械なのだそうです。

土屋商会様は今回、「よし、これ買おう!」と決断されてから、別の機械屋さん(商社)からも見積を取り寄せていました(土屋商会様の社長さんは、とても顔が広いのです…)。

一方の弊社は、修理もしますが「商社としての顔」もありますので、いろいろとご要望をうかがいつつ、お見積りを出しました。

 

が!なんと!弊社からのお見積りがちょびっとだけ高かった!

 

 

『機械を売る』商社は数多くあれど…

 

ではなぜ、土屋商会様は弊社を選んでくれたのか。

それは一重に

 

普段から修理やメンテで工場内の全機械の面倒を見てくれているから

 

でした!そして、中島氏や弊社社員の「人柄もだよー」と仰ってくれました!

これぞまさしく、エコ贔屓(笑)

 

かくして、「KNC-20Gの購入は株式会社ケーエスアイから」となり、あれよあれよという間に話が進みました。

設置場所はどうするか?電源はどこから?ほかの機械の移動は必要?など、中島氏も忙しくなります。

そしてやっと、搬入の日を迎えました。

 

 

『新しい工作機械』は、いつ見ても美しい…

 

さて、搬入当日。弊社からは中島氏ともう一人の新入社員君が立ち会いました。

当たり前のことではありますが、輸送時の事故(機械が倒れるとか傷つくとか)を避けるための丁寧な梱包と固定。慣れている人にしかできない職人技ではないでしょうか。

土屋商会様は、同じ区内の住宅街の中にありますので、周りには普通のお宅もたくさんあります。工場前の道は交通量が多いわけではありませんが、それほど広い道路でもありませんので、慎重に運び込んでいきます。

 

<機械を運び込む様子>

 

そして予定通りの場所に設置が終わると、今度はメーカーの方が来て調整し、試運転も行いました。

それを横から見ていた中島氏。

メーカーの方が帰られた後、機械に話しかけてました(笑)

 

<機械と会話する中島氏>

 

展示会に出展!!その後は……?

今回は、修理のお話しとは少し違います、という前置きをしつつ。

株式会社ケーエスアイは、2022年11月に行われた展示会に出展していました。

その名も【第24回 産業ときめきフェア in EDOGAWA】です。

 

展示会自体は江戸川区に籍を置く企業が出展するもので、自社で取り扱う製品や自社開発製品などを展示していました。

しかし。株式会社ケーエスアイには、「工作機械の修理」という技術力はありますが、販売している「自社製品」はありません。何となく出展ブースが広々してしまう…ということで、いつもの「スパナを持った手」を使ったポスターと、中島氏&相馬氏の修理写真を貼ってみました。

図1 展示会のブースの様子

 

あとはノートPCとモニターを持ち込み、2つの動画をエンドレスで流してみました。まずは、修理中の様子をスライドショーにしたもの。

動画1 修理写真のスライドショー

 

それから、普段はあまりこのサイトでは紹介しない社長ですが、何と!産業ときめきフェアの中でプレゼンも行いました!そのプレゼン動画も流してみました。

動画2 社長のプレゼン資料の動画

 

ブースのテーブルの上にはモニターしかありませんので「この会社、何やってるの?」が分かりにくかったかもしれませんが、社長のプレゼンと2つの動画、そしてブースの写真はなかなかのインパクトがあったようです。

ポスターはもう少し大きくても良かったかな?とか、壁を飾る写真をもっと増やしても良かったかな?とか、反省点はいろいろありますが、出展することでの嬉しい効果もありました。展示会に出展後、お付き合いが始まったお客様がいらっしゃいます。展示会パワー恐るべし!です。

色々な事前準備も必要ではありますが、今後もこうした機会を活かして行ければと思います。

椿ワークス事業部のご紹介

 

当サイトの「会社概要」には、2つの事業部があることを記載しています。いつもは【葛西機工事業部】の機械修理をメインにお伝えしていますが、今回はもう一つの事業部【椿ワークス事業部】についてお伝えします。

いつもはなかなか出てこない椿ワークス事業部ですが、実は株式会社ケーエスアイの売上高総利益の3~4割程度を占めている事業部なのです。

 

例えば、医療機関を受診した時に、病気の冊子を手にしたことはありませんか?

「お腹が痛い、なんだろう?」
「子どもの様子がいつもと違う、どうして?どうすれば良いの?」
「健康診断の結果が思わしくないなぁ……」
など、ちょっとした体調の変化や心配事があった時にインターネットで検索することはありませんか?

もしかすると、その時に目にする情報は、私たちが制作に関わったものかもしれません。

 

椿ワークスって何するところ?

 

保健医療福祉分野のライティングをはじめとする、さまざまなコンテンツの制作を請け負っている事業部です。その範囲は実にさまざまで、

●医療機関においてある病気やケガ等の冊子
●クリニックのWebサイトにある病気や治療法などの記事
●健康啓発サイトの生活習慣病や高齢者の病気などの記事

などなど、たくさんあります。

 

【Webコンテンツ、紙媒体での記事】

 

保健医療福祉分野の経験者がいますので、エビデンスに則った、読みやすく分かりやすい記事を書きます。

また、コンテンツ制作は取材から始まることもたくさんあります。椿ワークス事業部は、特に医師や看護師などの医療者への取材を得意としていますが、葛西機工事業部との連携もあり、ものづくり企業への取材も行います。

取材先は北海道から沖縄まで。日本全国どこへでも、お声がかかればうかがいます。昨今の状況を鑑みたオンライン取材もOKです!

 

【イラスト・イメージ図】

 

Webコンテンツに埋め込むような小さなものから、ポスターサイズの大きなものまで、柔軟に対応します。
提携先のイラストレーターさんにお願いすることもあります。

 

【動画】

 

制作規模が大きくなるような動画制作には対応できません。

その代わり、医療分野の知識を活かした小さな動画制作は、柔軟に対応します。Webコンテンツの制作等で培ったスキルを活かした、エビデンスに基づく「ストーリー性」のある動画を制作します。

サンプル動画はこちら

 

そのほか、こんなことにも対応します

 

椿ワークスはもともと、保健医療福祉が得意分野です。

一方の葛西機工事業部はものづくりが得意分野です。

両事業部のスキルとノウハウを活かし、医工連携に関わるお仕事を受託することもあります。

 

連絡先はこちら

 

株式会社ケーエスアイ 椿ワークス事業部

所在地:〒134-0081 東京都江戸川区北葛西 2-7-19

電話番号:090-9956-6465

 

手を取り合うって素晴らしい!特許取得までの道のり

今回の記事は前回に続き、弊社がこの度取得した「特許」に関する記事です。共同出願者の関根社長にお話しをうかがってきました。

 

 

旭梱包株式会社とは

 

―――御社の事業内容について教えてください

関根社長:基本的には輸出・国内の梱包です。梱包内容は種種雑多ですが、小さいものから大きいものまでさまざまな機械の梱包が主力事業です。その他にも、パレット製造、特注の木箱、輸出入代行を行っています。アジア、北南米、ヨーロッパ、アフリカと、全世界が相手国となります。

 

―――いつ頃からこの事業を行っているのですか?

関根社長:輸出入の事業は先代から始まり、昭和35年(1960年)ですから、今年で創業62年になります。ちょうど高度経済成長の時期で海外事業が広がった時代で、いろいろな日本製品が海外で取引されるようになり、今の数倍の輸出量がありました。梱包組合に加盟している企業の多くは、昭和20年代後半~30年代前半に創業していますね。

 

 

世界共通の「仕様」で、この分野は動いている

 

―――多くの国を相手にされているわけですが、国によって申請方法や基準などがあるのでしょうか

関根社長:国によってルールが決められています。内容物によっては国際航空運送協会(IATA)の危険物取扱の資格がないと取り扱えないということもあります。「危険物規則書」に梱包方法などが規定されていているので、それに沿って作業を進めていく形になります。

 

―――では逆に世界共通の決まりごとはあるのでしょうか

関根社長:例えば、使用する梱包材には注意する点があります。今、世界中でいろいろな「モノ」が取引されていますが、その影響の1つが「その国の在来種ではない生物も輸送される」ことです。日本でも「ヒアリ」や「セアカゴケグモ」が注目されましたよね。実際にはコンテナに入り込んで来るわけですが「梱包材内に害虫がいてはいけないのでその処理をしなさい」という規制が、ほとんどの国で採用されています。

それから、どの国でも梱包・輸送する際に注意しているのが、「中身が動かないように梱包すること」です。これは梱包するモノによって工夫の仕方が変わりますから職人技といえますし、世界共通のことではないでしょうか。

 

 

物流(梱包)業界は、機械化(自動化)が遅れている業界?

 

―――梱包の業界の機械化(自動化)はどうですか?

関根社長:そうですね。もともと手作業が多い業界ため機械化が遅れています。この業界最大の機械化といえるのが、40年以上前に開発された「釘打ち機」。作業員が手作業で一つひとつ打っていくのとは全然違いますから、当時としては画期的、革命的だったと思いますが、それ以降の機械化が進んでいない業界です。

<ハンディタイプの「釘打ち機」>

 

釘打ち機は片手で持てるハンディな機械なのですが、釘の長さによって大きさが異なり結構な重さがあります。これを1日中使うとなるとかなりハードなんですよね。でもそれ以上のモノが無い、そういう業界です。

 

 

今回の特許につながる”アイデア”を思いついた経緯

 

―――今回の特許対象となるアイデアはどのような経緯で思いつかれたのでしょうか

関根社長:梱包は2つの側面があります。1つは容器として木箱を作るということ、もう1つは中身がどう動かないようにするか=製品の固定 ということです。前述の通り、固定に関しては中身がそれぞれ異なるため、どうしても人手でやらなければならない作業であり、ここの機械化は難しいのです。

一方で箱に関しては、JIS規格で標準化できているためプロトコルがありますから、そこを機械化できればと思い至ったのです。もしも機械化できれば、今日入った人でもやり方を教えればベテランや職人と同じように作業ができますし、従来そこにかけていた時間を、人がやらないといけない作業=製品の固定などの重要な作業の方に充てていくことができると考えました。

 

―――いつ頃から、その構想はありましたか?

関根社長:梱包用の箱を作る作業というのは、大変な重労働なのです。鉄板に這いつくばるような恰好でも作業しますから、腰を傷める者もいて。作業数が増えるとそういう傾向があり、作業員のためにも何とかしたかったのです。第三者の目で見ても、こんな状態では新しい人は来ないよなと思っていましたから。

実は思いとしては10年以上前からありました。実際今回の特許対象に至るまでの間、パレットを作る機械という最初に浮かんだアイデアを、韓国の知り合いに話して試作したこともあったのですが、忙殺されて頓挫していたのです。

 

 

特許までの道のりは、長く険しい

 

―――関根社長の思いからどのようにして具体化していったのでしょうか

関根社長:思いはありましたが、じゃあどうやって具現化するのか というのは正直分からなかったのです。ただこれは本当にたまたまなのですが、付き合いのある銀行さんとの雑談の中で、機械化できたらいいけどどうしていいか分からないというような話をしていたんですね。こちらはあくまで雑談のつもりでした。

そうしたら、銀行さんの取引先の中で「一緒に考えてくれる人がいるかもしれない」という話になって。そこからさらに岡部さんを紹介してもらい、どのような形で具体化するかを相談しました。2019年のことです。

 

―――特許対象となったのはどういった部分でしょうか

関根社長:そうですね、先の釘打ち機ありますよね。ただ打つだけならああいう機械できます。梱包の箱を作る時には「クリンチ」と言って釘先を0.3cm以上折り曲げないとならないと決められています。折り曲げることで釘の保持力が増すからなのですが、実際には斜めに釘を打つことで実現しています。この作業は鉄板の上で行いますから、鉄板を滑ることで釘の先が曲がるのです。これを機械でやるとなると、木の材料や厚み、箱の種類等によって釘の打ち方が変わってくるので、どの角度で釘を打つとどうなるのかを、さまざまなパターンでテストしなければいけません。例えば材料の種類だけを見ても、ポプラ、スギ、12mm厚のラワン合板、8.5mm厚の合板、8.5mm厚の合板にLVLという合板を重ねて厚みを増した積層合板など、いくつもの種類があります。

<テストに使用した木材たち>

 

さまざまな条件の下でも動作するかどうか、時間をかけてすべてテストしてきました。今回はそこが、特許に繋がりました。

 

 

今回の”特許”は、業界の新しい風になるか

 

―――特許取得後、今後はどうしていきたいとお考えですか

関根社長:梱包事業のうち製函の部分は、機械化可能な部分だと思っています。今回特許を取得したのはそのコアとなる部分ですから、実際の木製パネルを作る機械を作り上げて初めて、意味を成します。そして製品を作り上げることで、対外的な信用やさらに高い評価も得られますから、なんとか製品化したいと思っています。

<新しい「釘打ち機」開発用の試験機>

 

さらに、製品ができあがって自社で試しに使ってみて実用に耐えるレベルになったら、他社への販売まで進めたいと考えています。同業者であればどこも同じ悩みを抱えているので、そういう製品があれば使いたいと思っていただけるのではないかと思います。

製品開発を進めていけば、制御や構造で新たなアイデアが特許に該当することも出てくるだろうと思います。この1回で終わりではなく、さまざまな段階で特許を取っていくことで、誰にも太刀打ちできないモノになるでしょう。

現時点では国内だけですが、いずれ世界中の人が欲しい製品になる可能性はあると思っています。この先海外で製品を使ってみたいということがあれば知財の保護は必須ですから、国際的な特許も必要になるかもしれません。まだまだ「やってみたいこと」はたくさんありますよ(笑)。


お忙しい中、快く取材にお応えいただいた関根社長、ありがとうございました。

弊社の社長もそうですが、「こんなことをしたい!」という夢をいつまでも持ち続けるって、すごい原動力になることが良く分かりました。
「釘打ち機」も、まだまだ終わりではありません。もっと先の未来へ向けて、これからもよろしくお願いします!

社長、特許を取る!!

今回は、修理のお話しとは少し違います、という前置きをしつつ。

 

この度、ケーエスアイの岡部社長が、何と!特許を取りました!!

もちろん、1人の力じゃないですけどね。

 

そもそものきっかけは、お付き合いのある銀行さんからのご紹介ですが、今回なぜ、社長は「特許取得」に関わることになったのか?社長に聞いてみました。

 

今から15年くらい前、ある人の「今のままの経営で、再び景気が悪くなったときに自社は生き残れるか」という言葉が胸にささり、単なる「商社」から、もう一つの柱をつくりたいと考えました。そこで、自動工作機械や切削工具の開発に着手しましたが、工作機械の方は商品にするまでには至りませんでしたね。
一方の切削工具の方は、商品化してしばらくの間は売れたのですが、ちょっと特殊な加工をしていて、それとそっくりな商品が大手メーカーから販売されるようになり、こちらも継続することは止めました。

その後は、事業内容を「工作機械の販売」と「修理」の2つの柱へとシフト。でも機械を開発することへの夢は今でも持っていますから、今回のお話しをいただいた時に

出来る限りやってみよう

と思ったのが、特許取得への第一歩でした。

 

ふむふむ。長年に渡って抱き続けた夢に、ちょっとだけ近づいた感じでしょうか。

さて、社長の「機械を開発する夢」と「特許取得」がどうつながっているのか、その答えは次の記事にあります!

機械だって逃げたくなる?スロッターマシンの修理

今回の修理は、「スロッターマシン」という機械。

刃を取り付けるアタッチメントを動かすための機構を、固定しているネジが折れてしまったとのこと。

ネジ交換のために、中島氏はお客様の工場を訪問しました。

 

 

そもそもスロッターマシンってどんな機械?

 

簡単に言うと、スロッターマシンは、刃を上下に動かすことにより工作物の外面やキー溝を削って、形をつくっていく機械です。

下の写真には刃物がついていませんが、通常は黄色い点線部分に刃物が取り付けられています。

<スロッターマシン>

折れたネジの交換

 

このスロッターマシン、刃を動かすためのアタッチメントがありますが、それを調整するための仕組み(機構)を固定する「ネジ」が折れてしまったとのこと。本体を分解しながら、ネジを交換しました。

<交換したネジ>

ネジを交換し再運転!さらに修理個所が・・・

 

通常、機械や装置の操作を行う機構は、がっちりと動かなくするのではなく、多少の「逃がし」があるように出来ており、これを調整するために、いくつかのパーツが使われています。

<「逃がし」を調整しながら刃を固定するためのパーツたち>

 

このスロッターマシンも、製品や刃を動かないようにすることは必要なのですが、刃をがっつりと掴みながらも、刃物が戻るときに加工している被加工物(金属の塊)にぶつからないように、「逃がし」という動作を調整できるようになっているはずです。この動作が無い場合、

 ●刃物が下りてきて、被加工物を削る

 ●加工中の金属の塊を「こすりながら」刃物が戻る

ということが起きてしまうためです。

 

しかし中島氏は、実際に動かした状態をみて、「なんかおかしい!」ということに気づきました。

お客様に聞いてみると、「逃がし」の動きを無くすよう、動作部分をがっちり固定していたことが分かりました。

さらに点検していると、ローラーの一部がめくれ上がって変形していることがわかりました。変形してしまっていたので、サイズ調整もうまくできていなかったようです。

<ローラーで削られた状態>

 

さて、困った中島氏。今回はそこまで交換する予定ではありませんでしたし、ローラーの手配にも時間を要します。そこで、お客様と相談してみると、自前でローラーを作っていただけることになりました。

数日後、「ローラー出来たよ」という連絡を受けた中島氏が、再び工場を訪問。お客様作のローラーを交換し、このスロッターマシンは、スムーズに本来の動きが出来るようになりました。

 

ということで、今回も中島氏の細かい気づきにより、無事修理を完了しました。機械が正常に動くことができお客様も喜んでおられました。

今回も、お疲れさまでした!

イタリア製もお任せ!2ロール転造盤の主軸交換

株式会社ケーエスアイでは、週に1回、対面での打合せをしています。6月最初の打合せのとき、中島氏から「来週あたり、イタリア製の工作機械の修理があるよ」という話がありました。

うーむ。椿さん、取材に行きたいのはヤマヤマなのですが、スケジュール的に行けそうにありません。

というわけで、今回も中島氏に自ら写真を撮ってもらい、後から修理の概要説明を受けることにしました。

 

中島氏、イタリア製の工作機械とご対面

 

今回の修理先は、自社からほど近い墨田区。
こちらのお客様の工場には、Made in Japan の工作機械もありますが、今回の修理対象は「イタリアORT社製 2ロール転造盤」です。

最初、お客様から連絡をいただいたときに「主軸がボッキリ折れた」とうかがったそうです。

中島氏はこのとき、

 

 

と考えたそうです。そりゃそうですよね。国内メーカーでも、発注すると数日以上かかりますし、「今から取りに行きます!」というのも難しい距離です(海を渡るし…)。

しかし、お客様は今すぐにでも修理をご希望の様子。よくよく聞いてみると、この機械は以前にも同じ個所の修理をしたことがあるとのこと。その時の教訓からか、「主軸はいずれ折れるもの。それなら予備を持っておこう」ということになり、新品の主軸をお持ちなのだそうです。

修理箇所は分かりましたが、ひとまずは詳しく確認しないと。というわけで中島氏は早速、お客様の工場を訪問しました。

 

 

主軸以外にも交換すべき箇所を発見

 

さて、中島氏はお客様の工場に到着すると、さっそく機械と会話しながら修理箇所を念入りに調べます。

<ボッキリ折れてしまった主軸を確認しているところ>

 

主軸が折れているのは、すぐに分かりました。理由は金属疲労。そして、前受けがヘタってしまったことも関係しているようです。

さらに、いろいろ調べてみると、どうやらベアリングもダメになっている様子。これはまとめて修理しないと、きちんと動かすことは難しそうです。中島氏はすぐに、新品のベアリングを手配します。

 

 

いよいよ、壊れたパーツを交換

 

数日後、中島氏は届いたベアリングをもって、再びお客様の工場へ向かいました。

まずは機械を分解しながら、交換するパーツ(主軸、ベアリング)をどんどん取り外していきます。

<折れてしまった主軸を取り外したところ>

 

……しかし、こんなに太くて頑丈な金属の棒が、これほどボッキリと折れてしまうって、どれだけ無理な力がかかったのでしょうか。日本製とかイタリア製とか関係なく、やはり金属を加工する工作機械って、ものすごいパワーが出るものなんですね。以前、別のお客様のところでも「ボッキリ折れた軸」を見たことがありますが、その時と同様、ちょっと恐ろしい気がしてきます。

この機械は2ロール転造盤なので、加工している間は常に、ここともう1本の主軸に振動や圧力が加わっていますから、ある程度の年数が経てば必ず「金属疲労」は起こります。結果、今回のように「ボッキリ」と折れてしまうのだそうです。

 

さて、主軸が外れたら、今度はベアリングです。取り外したベアリングと新品を、並べてみました。違いが分かりますか?

<新旧のベアリング>

 

ベアリング交換が終わったら、今度はいよいよ新しい主軸を機械に取り付けていきます。

<新品の主軸>

 

後は元通り組み立てて試運転して……のはずなのですが、組立はそれほど簡単ではなかったそうです。

イタリア製だから、というわけではなく、主軸がなかなか入っていきません。元々、かなりみっちりと嵌っているパーツではありますが、今回は中島氏一人で修理にうかがっていたこともあり、押し込む力は一人分しかありません。新しい主軸を傷つけないよう慎重に扱いながら、最後は少しずつ叩きながら入れたのだそうです。

さて、元通り組み立てが終わったところで、お客様に協力していただきながら、試運転。動き、音、振動など特に問題もなく、元通り動くことを確認して、今回の修理は完了です。

 

今日もまた、お疲れ様でした!

大きな機械の小さなパーツ シャーリングのオイルタンク交換

今回の修理は、「シャーリング」。

以前も別のお客様の工場で「シャーリング」の修理を行いましたが、今回は修理箇所が違うとのこと。さて、出張修理人は今回、何をどう修理してきたのでしょうか。

 

 

修理数日前 下見にて「シャーリング」とご対面

 

今回の修理、実は当Webサイトを通じてご連絡いただいた、新しいお客様です。

「出張修理人の軌跡」をご覧いただいた機械商社の方から、「栃木県のとある工場にあるシャーリングの動作がオカシイので、見てくれないか」とご連絡をいただきました。

シャーリングは本来、「手前→奥」の順番で刃が動くはずなのですが、 どうやら手前が動いていないとのこと。恐らく「クラッチが動いていない」可能性が考えられました。そこで、中島氏が下見としてお客様の工場に伺いました。

中島氏は、お客様の工場に到着して機械とご対面。どうやら、オイルタンクが寿命を迎え、機械全体にうまく油を供給できず、クラッチが動かなくなっているようでした。

 

 

何が原因でこうなった?

 

シャーリングのオイルタンクは、機械全体の大きさからすると小さ目のパーツですが、機械全体へオイルを供給するプロパーユニットは、機械にとっては大事なパーツ。機械そのものは電気で動きますが、オイルがしっかりと流れないと、どこかで目詰まりを起こしてしまいます。

必要な時にオイルが供給されなければ、機械は摩耗し、壊れてしまいます。オイルを血液に例えるなら、オイルタンクは体全体に血液を送り出す、心臓のような役割があるのです。

今回のシャーリング、何とかポンプを回すと、一応オイルは流れます。しかし、プロパーユニットから出ていくのは、ほんの数適。これでは、機械の右側で回っている「軸」へ、十分なオイルを供給することができません。

<いつ見ても「デカい!」と思わせるシャーリング>

 

そもそもこのシャーリングはかなり働き者の機械で、ほぼ半世紀くらいは働いてきたようです。しかしこまめに動かしていないとオイルが詰まってしまい、上手く流れなくなります。今回の原因はこのあたりにあるようです。

一応、少しずつはオイルが供給されてはいますが、今の状態のまま修理しない場合、軸やスライドが摩耗し、焼き付いてしまう可能性があります。つまり、機械そのものが寿命を迎えてしまうわけです。自動車でいえば、オイル無しで運転しようとするのと一緒。オーバーホールするという手もありますが、恐らく高級外車くらいの費用がかかってしまいそうです。

中島氏は「目に見える問題箇所はまず直そう」ということで、新しいオイルタンクを注文。入荷したらすぐに修理することになりました。

 

 

修理当日 手先が器用って素晴らしい

 

さて、オイルタンクを注文してからおよそ2週間、やっと入荷したタンクを持って、中島氏は再びお客様の工場へ向かいました。

ところで、このシャーリングは前述の通り、すでに半世紀くらいは働いている機械です。まったく同じポンプを入手することはできませんでした。

しかしここからが中島氏(出張修理人たち)のスゴイところ。シャーリングのメーカーからではなく、まったく別のパーツメーカーから、ほぼ同サイズで同等の機能を持つポンプを取り寄せていました。

というわけで、サクサクと修理を進めていく中島氏。

機械全体は使用感が満載なのですが、新しいタンクとともに交換するパーツはとてもピカピカ!「新品感」が漂っていました。

<機械全体へオイルを分配するプロパーユニット>

 

オイルを分配していくプロパーユニットの交換作業は、なかなか細かい作業が続きます。

……ん?何となく、この金ピカなネジ?は見たことがあるような…?

そういえば、椿さんが最初に出張修理人を取材したときも、何となくこんな部品を見たような気が。試しに中島氏に聞いてみると…

なるほど!また一つ、何となく賢くなった気がしました。

 

そんなことをしている間に、タンクの交換作業も無事終了です。お客様立ち合いの下、しっかりと動作確認をして、今回の修理は完了しました。

今回も、お疲れ様でした!