イタリア製もお任せ!2ロール転造盤の主軸交換

株式会社ケーエスアイでは、週に1回、対面での打合せをしています。6月最初の打合せのとき、中島氏から「来週あたり、イタリア製の工作機械の修理があるよ」という話がありました。

うーむ。椿さん、取材に行きたいのはヤマヤマなのですが、スケジュール的に行けそうにありません。

というわけで、今回も中島氏に自ら写真を撮ってもらい、後から修理の概要説明を受けることにしました。

 

中島氏、イタリア製の工作機械とご対面

 

今回の修理先は、自社からほど近い墨田区。
こちらのお客様の工場には、Made in Japan の工作機械もありますが、今回の修理対象は「イタリアORT社製 2ロール転造盤」です。

最初、お客様から連絡をいただいたときに「主軸がボッキリ折れた」とうかがったそうです。

中島氏はこのとき、

 

 

と考えたそうです。そりゃそうですよね。国内メーカーでも、発注すると数日以上かかりますし、「今から取りに行きます!」というのも難しい距離です(海を渡るし…)。

しかし、お客様は今すぐにでも修理をご希望の様子。よくよく聞いてみると、この機械は以前にも同じ個所の修理をしたことがあるとのこと。その時の教訓からか、「主軸はいずれ折れるもの。それなら予備を持っておこう」ということになり、新品の主軸をお持ちなのだそうです。

修理箇所は分かりましたが、ひとまずは詳しく確認しないと。というわけで中島氏は早速、お客様の工場を訪問しました。

 

 

主軸以外にも交換すべき箇所を発見

 

さて、中島氏はお客様の工場に到着すると、さっそく機械と会話しながら修理箇所を念入りに調べます。

<ボッキリ折れてしまった主軸を確認しているところ>

 

主軸が折れているのは、すぐに分かりました。理由は金属疲労。そして、前受けがヘタってしまったことも関係しているようです。

さらに、いろいろ調べてみると、どうやらベアリングもダメになっている様子。これはまとめて修理しないと、きちんと動かすことは難しそうです。中島氏はすぐに、新品のベアリングを手配します。

 

 

いよいよ、壊れたパーツを交換

 

数日後、中島氏は届いたベアリングをもって、再びお客様の工場へ向かいました。

まずは機械を分解しながら、交換するパーツ(主軸、ベアリング)をどんどん取り外していきます。

<折れてしまった主軸を取り外したところ>

 

……しかし、こんなに太くて頑丈な金属の棒が、これほどボッキリと折れてしまうって、どれだけ無理な力がかかったのでしょうか。日本製とかイタリア製とか関係なく、やはり金属を加工する工作機械って、ものすごいパワーが出るものなんですね。以前、別のお客様のところでも「ボッキリ折れた軸」を見たことがありますが、その時と同様、ちょっと恐ろしい気がしてきます。

この機械は2ロール転造盤なので、加工している間は常に、ここともう1本の主軸に振動や圧力が加わっていますから、ある程度の年数が経てば必ず「金属疲労」は起こります。結果、今回のように「ボッキリ」と折れてしまうのだそうです。

 

さて、主軸が外れたら、今度はベアリングです。取り外したベアリングと新品を、並べてみました。違いが分かりますか?

<新旧のベアリング>

 

ベアリング交換が終わったら、今度はいよいよ新しい主軸を機械に取り付けていきます。

<新品の主軸>

 

後は元通り組み立てて試運転して……のはずなのですが、組立はそれほど簡単ではなかったそうです。

イタリア製だから、というわけではなく、主軸がなかなか入っていきません。元々、かなりみっちりと嵌っているパーツではありますが、今回は中島氏一人で修理にうかがっていたこともあり、押し込む力は一人分しかありません。新しい主軸を傷つけないよう慎重に扱いながら、最後は少しずつ叩きながら入れたのだそうです。

さて、元通り組み立てが終わったところで、お客様に協力していただきながら、試運転。動き、音、振動など特に問題もなく、元通り動くことを確認して、今回の修理は完了です。

 

今日もまた、お疲れ様でした!

NC旋盤 ポンプ交換のその後に

機械の動作が止まる――。これは、工作機械を使って製品をつくる側にとって、業務が止まってしまうことを意味します。だからこそ中島氏のような「出張修理人」があちこちの工場を回って、「止まる」原因を調べたり、機械を調整したり、部品交換などの「修理」をしたりすることになります。

しかし、実際に工場に伺うと、「止まる」という症状が無くなってしまうケースも多々あります。今回はそんなケースです。

 

 

 

今日もNC旋盤の裏側での作業です

 

実はこの前日、中島氏は同じ機械に対し、別の修理(ポンプの交換)を行っていました。今日はそことは別の部分を修理する予定です。

今日の機械は中村留のTMC-20。製造年月が昭和63年4月となっていますので、30年以上現役で活躍している機械のようです。

そして、今日も「機械の裏側」をじっくりと見せていただくことができました。しかし…表から見ても複雑ですが、裏側ってホントに何がどうしてどうなっているのか、私にはまったく分かりません。

<修理対象の機械を裏側からみたところ>

 

この黄色い点線で囲った中に、今回修理するパーツが含まれているようです。

 

 

ターゲットは近接スイッチ

さて今回の中島氏、ターゲットとなる近接スイッチを見つけ出し、その周りにエアーを吹きかけながらキレイにしていきます。そして見つかった近接スイッチを、「コレだよ」とみせてくれました。

<今回のターゲット 近接スイッチ>

 

しかし、これを交換するのかといえばそうでもなく、どうやらゴミや水を吹き飛ばして、動作確認をするようです。…何で?

…と思ったけれども、実際には「よくあること」らしい。

そもそも「動作が止まった」状況を正確に再現することは難しいですし、「止まる」原因もたくさんあるため、いくつかの原因が複雑に絡み合って「結果的に止まる」こともあるのだそうです。

そして今回、中島氏が問題ではないかと考えたこのスイッチ、良く見ると金属の破片や油などの「ゴミ」が付着していました。これを掃除しただけでも「止まる原因」を取り除いたことになるかもしれない、とのことです。

 

 

動作確認をお客様とともに

今回お邪魔した「三和製作所」さまは、10台以上の大型工作機械があるような工場です。ご兄弟で経営されていますが、もちろん、他にも職人さんがたくさんいらっしゃいます。

今回はこの機械をよく使用されているという、弟さんの方に機械の動作確認をお願いしました。

<お客様とともに動作確認中>

 

実際に私もそばで見せていただきましたが…やっぱり「止まる」ことなく動いています。

10分ほどすぐそばで見せていただきましたが、1つずつが小さいからなのか、1分足らずで加工されたものが次々と出てきます。

 

<NC旋盤での加工が終わって排出される完成品>

 

うーん、確かに問題なく動いているように見えます。

ちなみに、昨日修理したのはこちら。

<NC旋盤本体の裏側にあるポンプ>

 

今回は「止まる」という症状が見られなくなったので、ひとまずはこのまま様子をみていただくことになりました。

 

 

今回のお客様はこんなところ

<有限会社 三和製作所>

〒341-0037 埼玉県三郷市高州3丁目26-4

TEL:048-948-2981

三和製作所様は、精密金属加工を得意とされる工場です。ここでつくられた製品は、自動車や産業ロボットなどのほか、医療機器の中にも使われています。大型の加工機械が10台以上ありますが、中には「自分たちで考案してメーカーに作ってもらった機械」もあります。メーカーの本拠地である石川県まで何度も出向き、つくり上げた機械なのだそうです。

今までは、機械の調子が悪くなるとメーカーにお願いしたり、簡単なところなら自分たちで何とかしたりしてきたんだよね。でも、中には「どこが悪いのか」が分からないものもあるので、連絡するとすぐに調べに来てくれるのは良いよね。今回初めてお願いしたけど、これからもどこか調子が悪くなったら相談しようかと思ってます。

 

 

一つ止まればみな止まる?!コンプレッサーの基盤交換

今日の修理は、「油圧式コンプレッサー CLP37B-8.5D」の2回目です。

前回、「コンプレッサーが止まった!」というご連絡を受け、中島氏が調査およびとりあえずの応急処置をしてきました今回は、メーカーに発注していた基板が届いたので、これを交換することになりました。

 

応急処置をした油圧式コンプレッサー スイッチも交換?

 

今日の修理はまず、コンプレッサーの正面にあるスイッチをランプの交換からスタートです。

実はこのコンプレッサー、電源ランプ、ドライヤのアラームランプ、電源スイッチ、ドライヤスイッチの4つが基板からつながっており、これが正面にあります。このうち、ドライヤのアラームランプが割れてしまっていましたので、交換です。


<交換したランプとスイッチたち>

 

いよいよ、基板2枚を交換

 

まずは1枚目。こちらの基板からは、マグネットスイッチと圧力スイッチへの配線が接続されていたようです。

基板を交換しつつ、応急処置前の「本来の接続」につなぎ変えていきます。

<応急処置と本来の配線 模式図>

 

あれ?でも、前回の応急処置って、3週間くらい前だったような気が…。

すると中島氏は、おもむろに自分のスマホを取り出します。

<「本来のつなぎ方」の写真を確認する中島氏>

 

中島氏は、最初にこのコンプレッサーの修理にうかがった際に、配線を変える前、つまり「本来のつなぎ方」の写真を撮って残していました。

今回の修理に限ったことではありませんが、基板とその先にある構造(今回はスイッチ)との間には、複数の色のケーブルでつながっています。このケーブル(正確には導線を覆っている絶縁体)の色が重要なのだそうです。

 

ひぇー!それは大変!

私もかつてはデスクトップのパソコンを組み立てたりもしたけど、ケーブルのつなぎ替えまではやらなかったなぁ。「電気」って文明の利器ではあるけど、使い方を間違えると結構大変なことになるし、やっぱりよく分かっている人に修理してもらう方が安全、ということなのか。

と、考えながら見ていると、1枚目の基板交換が終了。続いて2枚目の基板交換です。

こちらも以前に撮って残しておいた写真を見ながら、慎重に交換していきます。

 

<通常の2倍のケーブルたち>

 

修理は完了?お客様と一緒に動作確認

 

2枚の基板を交換し、ケーブルを整理したところで試運転です。お客様にブレーカーを操作していただき、中島氏がコンプレッサーのスイッチをON!

Buooooooon という音と共にコンプレッサーが起動!

修理の間は工作機械たちがお休みしていたので、工場内のあちこちにぶら下がっている「ハンディタイプのエアガン」を使って、圧縮空気がちゃんと届いていることを確認していただきました。

それからもう一つ。コンプレッサーに使われている「エアドライヤー」という仕組みがありますが、こちらも動作確認です。とはいえ、確認する方法は「エアドライヤーが動く音がするかどうか」ということ。

コンプレッサーを動かしてしばらくすると ブシュー! という音がしました。この音がエアドライヤーがちゃんと動作している音なのだそうです。

「圧縮空気を送る」という機能と、「圧縮空気の中から水分を取り除く」という2つの機能が動くことを確認し、今日の修理は完了です。

 

お疲れさまでした!!

 

今回のお客様はこんなところ

 

【長田螺子製作所】
〒131-0041 東京都墨田区八広6丁目36?8
TEL:03-3612-6455

先代の頃から螺子を作り続けて50年以上、さまざまな形状の螺子の製造から二次加工まで、あらゆる「螺子」に対応しています。

【お客様の声】

中島さんがウチに初めて来たのは、15年くらい前、ウチが3台目のNC旋盤を入れた時かな。当時はまだ入社したばかりだったらしいけど、しばらくしたら一人でも修理しに来てくれるようになったと思う。

今回は、電話したらすぐに来てくれたので助かった。機械は動いてくれないと仕事にならないから、すぐに来てくれるのは良いよね。

扱いを間違えるととても危険?シャーリングの調整

ベンディングロールの調整に続き、今度は工場の奥に設置された、「シャーリングの刃の調整」です。
前回おうかがいした時、工場の方は

「金属の板を切断すると、一部にかなりの【バリ】が出る」

と仰っていました。中島氏の見立てによると、「刃の固定がわずかにゆがんでいるため、金属の板をささえている部分とのスキマが均一になっていない」とのこと。今回はここを調整します。

 

シャーリングの調整前の下準備

 

さて、本日も「シャーリング」とご対面。しかし、大きいなぁ…。万が一動いているときに手を出したりすると、とんでもない大惨事になることは明らかです。

中島氏と相馬氏は、ちょうど良い位置に「刃を固定している箇所」が来るように、丁寧かつ慎重に作業を進めていきます。

<「刃を固定している構造」を合わせているところ>

 

ところでこの機械、けっこう年季が入っているように見えますが…少なくとも40年以上は稼働している機械ということが分かりました。機械操作の注意書きが貼りつけられていますが、こんな感じです。

<取り付けらている注意書きのプレート>

 

こういう仮名遣い、今では見ませんよね。昭和50年代くらいまでに作られた工作機械には、今でもこうした仮名遣いのものが取り付けられているのだそうです。

 

刃を固定するネジたちをゆるめていく作業

 

中島氏と相馬氏は機械の裏側に回り、シャーリングの刃を固定しているネジたちを少しずつゆるめていきます。裏側はとても暗いので、相馬氏が照らすライトがなければ手元が見えません。なかなかのチームプレーです。

<相馬氏が中島氏の手元を照らしているところ>

 

ところで、なぜ新聞紙が挟まっているのでしょうか?
それは、お客様から「新聞紙位のスキマを開けておいてね」というオーダーがあったからです。
現在の問題は「部分的にひどいバリができる」こと。つまり、板を置く台の1辺と刃とのスキマが、平行ではないことが問題のようです。

でも、「刃が平行でないこと」と「バリができる」ことの間に、どのような問題が???

中島氏に聞いてみました。つまりこういうことのようです。

 

 

<刃が平行でないとどうなるか>

 

というわけで、「刃を固定しているネジ」の締め具合を調整する必要があります。まずは「ちょうど良く」締め直すために、一度すべてのネジとナットを、少しずつゆるめていきました。

 

「押し」と「引き」で固定しているネジ

 

さて、ゆるめているネジを良く見ると、ネジの頭部分が見えているものと、ナット部分だけが見えているものがあります。なぜ???

なるほど!両方からの力で、このとても重たい「刃」を固定しているわけか!

このシャーリングは、4.5mmまでの金属の板を切断できる機械のようです。刃の動きは、上からまっすぐスパーンと落ちてくるのではなく、正面右から正面左の方向へ、斜めに刃が下りていきます。最初に刃が下りてくる部分と後から刃が下りてくる部分には、わずかですが時間差ができます。

固い材質や厚みのあるものを切断し続けていると、後から刃が下りてくる方に負荷がかかり、板を支える台と刃との間にスキマができてくるのだそうです。すると今回のように「部分的にひどいバリができる」ということになります。

こうした機械は時々、刃を固定しているネジを締め直し、「押し」と「引き」との力の強さを調整していく必要がある、ということでした。

 

「新聞紙1枚分のスキマ」を維持するのは難しい?

 

何度か、全体のネジとナットの締め具合を調整し、全体的に

「だいたい新聞紙1枚分のスキマ」

をつくることができました。ただものすごく厳密にいうと、すべてを平行にし、絶対に動かないように固定するのは難しいのだそうです。

シャーリングの刃は簡単に交換できるものではありません。また、切断する金属板の材質や形状によっては、刃にかかる負荷は均一ではありませんので、使用しているうちにわずかな「ゆがみ」が生じます。固定するネジにも負荷がかかり、締め具合にも変化が生じたりしてしまうのだそうです。

ということを、シャーリングをよく使う工場の方に説明しつつ、ためしに金属の板を切断するところも、見せていただきました。

スパーンと金属の板が切断されるところは圧巻!

切断面を見ながら、これくらいは大丈夫!」というお墨付きをいただき、今日の修理(というより調整)は終了です。

 

今回のお客様はこんなところ

 

<名和工業 株式会社>

〒132-0025 東京都江戸川区松江6丁目4-21

TEL:03-3653-7491

集塵機・空調ダクトの製作から、取付工事、塗装工事、配管工事、足場工事まで、大規模工場内の「ダクト」に関することならあらゆる行程に対応している工場です。いわゆる「設備」に関する部分に対応しているため、お客様の施設に合わせた設計から一貫して対応しています。

工作機械の奥は深い!ベンディングロールのモロモロを修理 その1

今回のお客様は、実は株式会社ケーエスアイにとって、初めての「修理依頼」をいただいたお客様です。

そんな「初めまして」のお客様のところにまでカメラ持ち込んで取材させていただいても良いのか?という気もしますが、中島氏がお客様に確認を取ってくれたので、構わずお邪魔することに。

今回のお客様は、KSIと同じ区内の工場で、とある金融機関の方から紹介され、修理に伺う数日前に、中島氏とKSIの社長がご挨拶と下調べに行っていました。

「いろいろな機械の調子が悪くて、どこから直していけばよいのかもわからない状態」と聞いていたそうですが、まずは一番取り掛かりやすそうな「ベンディングロールの油圧配管の一部からのオイル漏れ」の修理を行うことになりました。

 

小雨でも入口全開な工場にて

 

工場についてみると…デ、デカい!そして入口の扉は全開で、大きな円筒状ものを溶接している社員さんの姿が見えます(後にこの円筒状のものは、大きな配管だということが分かりました)。

端の方に「安全通路」とあるので、そこから工場の中へ。

 

入り口から数メートル入ったところに、今日修理をする「ベンディングロール」がありました。どうやら、トップロールを動かす油圧システムの辺りで、オイル漏れが生じているようです。

ベンディングロールには、油圧式で動くものと、モーターで動くものがあるようですが、今回のは油圧式。オイル自体は油圧タンクから細ながーい配管を通ってきますが、配管と油圧の機構との継ぎ目のところでオイルが漏れていました。

そこで中島氏は、配管を固定しているネジを緩め、オイル漏れが生じている部分を取り外すことに。

<オイル漏れしている機構部分を外しているところ>

 

配管は全部で4本。それぞれの継ぎ目を一旦外して、キレイに拭いた後、きっちりと締め直していきます。

<今回修理したのはこの4つの継ぎ目>

 

継ぎ目を締め直し、今日の修理「前半戦」が終了。

…ということは、後半戦もあるわけで…

 

後半戦は「機械のゆがみ」の調整

 

実はこのベンディングロール、「固定」と「転倒」の数値に、わずかですがズレが出ています。

実際にどれくらいのズレが出ているのか、少しずつトップロールを動かしながらチェックしていきます。ゼロ点まで動かすとズレは無くなるようですが、トップロールの動きが大きくなるほど、ズレが広がっていくようです。いろいろとトライしましたが、やはり制御盤の方での調整が必要な様子。中島氏は準備していた資料を片手に調整を始めました。

 

<資料を隅々まで見ながら、機械と会話を始める?中島氏>

 

中島氏の資料をチラリと覗いてみたところ…私にはさっぱり分かりません。

中島氏は電気工事士の資格を持っています。その中島氏もこの機械を調整するのは初めてとのこと。それでも一生懸命トライするのですが、やはりどうしてもごくわずかなズレが生じてしまいます。

その理由はどうやら、ベンディングロールを設置している床面にあるようです。

 

 

…という、機械の声が聞こえたのかどうかは分かりませんが、どうやらベンディングロールの下が水平では無いのではないか、という結論に至りました。

 

社長さんへ、現状報告と次回修理のお願い

その後、中島氏が事務所へ行くというので、私も付いていくことに。

いろいろとお話しを伺いながら、中島氏からは現状の報告と、近日中に再度修理と調整が必要なことをお伝えしました。

 

 

というわけで、床面のゆがみの調整は次回持ち越しとなりました。

社員の方へも次回修理までの間の「細かい調整の仕方」をアドバイスして、微調整しながら使っていただくようにお伝えして本日の修理は終了です。

 

<細かい調整についてアドバイスする中島氏>

 

この続きは、次回のレポートにて!乞うご期待!

 

今回のお客様はこんなところ

<名和工業 株式会社>

〒132-0025 東京都江戸川区松江6丁目4-21

TEL:03-3653-7491

集塵機・空調ダクトの製作から、取付工事、塗装工事、配管工事、足場工事まで、大規模工場内の「ダクト」に関することならあらゆる行程に対応している工場です。いわゆる「設備」に関する部分に対応しているため、お客様の施設に合わせた設計から一貫して対応しています。

 

【お客様の声】

うちにはいろいろな機械がありますが、どれか1つの調子が悪くなっても、すぐに修理するのが難しいことが多くて、困っていたんです。今回のベンディングロールも、修理まで何週間も空くようだとどうしても外注先に加工をお願いすることになってしまいますし。「すぐに修理や調整の対応をしてくれるところ」を、ずっと探していたのです。

今回は初めて修理をお願いしましたが、うちからも近いようですし、すぐに来てくれるので本当に助かります。調子が今一つな機械が他にもあるので、引き続きお願いしたいです。

 

まだまだ現役!50年以上稼働している転造盤の配線修理

今回の修理は、作業自体はそれほど難しくは無かったのですが、原因が分かるまで少し時間を要しました。しかし、中島氏の「修理に対するマインド」を目の当たりにする結果となりました。

 

今日“修理”するのは、有限会社関根製作所が所有するツガミ製の5トン転造盤。

「タイマー仕掛けでくり返し動作する」という機構に問題があるようです。

 

転造盤とは何ぞや?

 

「今回は転造盤の修理」と聞いていたので、ちょっとだけ下調べをしてみました。

しかし「転造盤とは」でWeb検索しても、なかなか良い情報が出てきません。

そこで「転造」で調べてみると、Wikipedia にありました。

「転造法は塑性加工属する鍛造法であり、材料を回転させながら硬質の金型に押し付けることで形を形成するものである。」

引用 Wikipedia 転造 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%A2%E9%80%A0

 

 そういえば、会社の中に「転造ダイス」がいくつもあったけど、アレが「硬質の金型」なのか!

 

 

と、今回もやっぱり「少しだけ分かった」ような気になったところで、お客様の元へ。

 

タイマー仕掛けで動く転造盤

 

お客様の工場に着いたところで、まずは機械とご対面。

そうそう、コレ!この「転造ダイス」が、よく荷物として届きます。

<今回修理する転造盤を上から見たところ>

 

そうか、転造ダイスはこうやって使うものなのか!と、一人でふむふむと納得していると、中島氏がなにやら機械を分解し始めました。

今日は「設定した通りにくり返し動作する、という機構が上手く動かない」と聞いていたのですが、中島氏が分解しているのはタイマーのようです。

よく見ると、タイマーは2つあります。これを外して、裏側から通電しているかどうかをチェックしていきます。

 

<タイマー裏の配線をチェックする中島氏の手>

 

配線を組み替えたりしながらチェックしてみたところ、通電されない箇所があることが分かりました。

「タイマーの故障かもしれない」とのことで、お客様のところにあった新品のタイマーと交換してみることに。

元々の配線をメモに残しつつ、慎重かつ丁寧な作業を続けていきます。

 

<交換した新品のタイマー>

 

配線が終わり、タイマーを元の位置に戻して、転造盤を動かしてみます。

「ガチャン!」という音とともに、1回目は動作しましたが…あれ?2回目が動かない???

 

タイマーには問題なさそう、ではどこに問題が?

 

転造盤はそもそも、タイマーで設定したタイミングでくり返し動く工作機械です。

材料となるワークをセットし、1回あたり3秒程度の時間をかけて、転造ダイスを押し付けながら「ねじ山」を切っていきます。

これを自動的にくり返し行う仕組みが、タイマーと主軸を動かす電磁弁、そしてマグネットスイッチです。マグネットスイッチは、タイマーからの信号を主軸に伝えるための、交通整理をしています。

今回の修理、タイマーの方に問題が無いとなると、どうやら原因はこのマグネットスイッチにあったようです。

 

そこで中島氏は、機械の横側からマグネットスイッチを点検することにしました。

…その前に、機械の脇に積まれていたたくさんの転造ダイスを動かす、という作業が発生したのですが。

 

<タイマーを戻しながら転造ダイスの山を見つめる中島氏>

 

原因解明!マグネットスイッチへの配線の“断線”

 

中島氏は、機械脇に積まれた転造ダイスを動かしつつ、「すいません、新聞紙たくさんください」と、お客様へ声をかけました。

新聞紙???何をするの???

と、頭の中にクエスチョンマークがいっぱいになった状態で見ていると、中島氏は新聞紙を床に敷き、そのまま機械の横に潜り込んでいきました。

<床に新聞紙を敷き、その上に寝転がりながら機械の横に入り込む中島氏>

 

どうやらこの転造盤、機械の横にメンテナンス用の窓があり、そこからマグネットスイッチに到達できるようです。

機械の脇に潜り込んだ状態でチェックしてみると、タイマーからマグネットスイッチにつながっていたケーブルが、断線していたことが分かりました。

 

マグネットスイッチは1日に何百回も動作しますから、振動によりケーブルの接続部分に緩みが生じることがあるそうです。

今回の不具合の原因となった、マグネットスイッチに接続するU字端子をケーブルにつなぎ直すことで、今回の修理は終了です。

 

今回のお客様はこんなところ

 

<有限会社 関根製作所>

〒124-0014 東京都葛飾区東四つ木4-19-4

TEL:03-3691-4342

 

【お客様の声】

ケーエスアイさんとは長い付き合いなんだよね。まだ社長が一人でやってた頃から知っていて、機械をばらして組み立てたこともあったよね。ケーエスアイさんから依頼されて、既製品には無い部品を作ったこともあるかな。

うちにある機械はみなそれなりに年季が入った機械だから、メーカーが無かったり、あっても修理してくれなかったりする。機械が動かなくなるのはすごく困るけど、中島君が修理をするようになってから、ちょっとしたことでもすぐに来て調べてくれるようになった。おかげでかなり助かってます。

 

古くても大丈夫!マシニングセンターのサーボモーター交換

 

今日“修理”するのは、株式会社土屋商会が所有する、立型マシニングセンター。X軸を決めるサーボモーターに問題があるようです。

実は中島氏、この1週間くらい前に土屋商会を訪れていました。

きっかけは「何だか、X軸が上手く動かないんだよね」という、社長からの1本の電話で、実際に故障している箇所を調査していたのです。

その結果、サーボモーターの交換をすることになり、メーカーから取り寄せていました。

 

マシニングセンターは1台で何役もこなす機械?

 

今回の修理は、キタムラ製の立型マシニングセンター Mycenter0。

正確な納入年月日などは分かりませんでしたが、少なくとも20年以上は稼働している機械だそうです。

マシニングセンターは、X軸、Y軸、Z軸と3方向それぞれにサーボモーターが取り付けられています。今回の機械は、サーボモーターそのものは同じものが使われていますが、軸方向によって取り付けられている位置が変わります。

<交換することになったX軸用のサーボモーター>

 

今回修理することになったMycenter0は、いわゆる「立型」と呼ばれるもので、マシニングセンタ―の中でも比較的小型なものの様です。

マシニングセンターとは、一般社団法人日本工作機械工業会では、以下のように定義されています。

中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工を連続で行えるNC工作機械で、それぞれの加工に必要な工具を自動で交換できる機能を備えています。機械の軸構成によって横形、立て形、門形など各種のマシニングセンタが使われています。

引用: 『工作機械の種類と加工方法』一般社団法人日本工作機械工業会

 

…と、何となくマシニングセンターが分かった様な気になったところで、出張修理人たちの仕事を取材することに。

 

サーボモーターの取り外し

 

まずは、注文していた交換用の新品サーボモーターと同じものを探して取り外さなくてはなりません。

ターゲットはすぐに見つかったのですが……

どうにもこうにも、人の手がなかなか入らないところにあります。

 

「横の窓を開けるか」。中島氏は、パートナーの相馬氏に声をかけました。

<機械横の窓を開けて作業中の出張修理人ペア>

 

サーボモーターを固定しているネジを、すべて慎重に外して動くようにしてみたのですが……なぜか、外れません。

中島氏は、メーカーに電話確認してみました。

 

  すいません、サーボモーターが外れないんですけど…

  ●●を▲▲すると外れると思いますよー

 

というメーカー担当者さまのアドバイスにより、再度チャレンジしてみたけど、やはり外れません。

<本日何度目かの電話をする中島氏>

 

  すいません、●●を▲▲するんですよね?やっぱり▽▽してしまうので外れないんですが…

  あぁ、それはですね。※※を◎◎して□□にすると外れます。

 

 な、なんですと!?そんな裏技が!!

……ここは企業秘密なので詳しくはお伝えできませんが、中島氏曰く「目からウロコ」な方法で取り外せるとのこと。さっそくやってみると、ここまでの苦労は何だったのか!というくらい、あっさり外すことができました。

 

時には工具もその場で手作り

 

さて、サーボモーターが機械から外れたのは良いのですが、今度は新品サーボモーターをそのまま取り付けることが出来ません。

アタッチメントを取り外して新しいものに取り付けるのが、とても難しいのです。理由は「手持ちの工具だけではできない」から。

そこで中島氏は、手持ちの工具をその場で改造することにしました。お客様のグラインダーと、端材を借りて💦

 

サーボモーター交換、そして試運転へ

 

アタッチメントを新しいサーボモーターに取り付けたら、今度はいよいよ本体へ取り付けます。

 

でも、機械の中は狭くて暗い。手持ちのライトで手元を照らしながら、二人とも体半分を機械の中に突っ込んで作業します。

外す時よりも取り付ける時の方が、二人とも慎重だったかもしれません…。

 

そしていよいよ確認のための試運転へ。

お客さまに協力していただき、機械を動かしてみました。

<修理後の試運転(相馬氏は横の窓を直しています…)>

 

特に問題もなく動作することを確認して、本日の修理は終了です。

二人とも、お疲れさまでした!

今回のお客様はこんなところ

 

【株式会社 土屋商会】

〒124-0023 東京都江戸川区大杉5丁目13-12

TEL:03-5663-5333

自動車、医療機器、建築関係など、多様な分野で利用される精密機械部品を製造しています。社名の通り元々は商社でしたが、先代の頃から「もう一工夫のニッチな金属加工」を行うようになり、現在は二次加工も含めた精密金属加工を得意とする工場です。

 

【お客様の声】

中島さんは、ちょうどウチ向きというか。当社の加工機械は、大手メーカーのものもありますが、中には特殊な機械もありますし、すでに製造元が無くなってしまった機械もあります。本来ならば工場の中で詳しい人が触って直すような機械かもしれませんが、そんなに簡単でもありません。でも中島さんはいろいろな工場を見ているから、こちらの言いたいことが伝わりやすい。言葉が通じて、やってくれることも間違いない、頼れる修理人です。中島さんに修理をお願いするようになってから、かなり助かっています。