これは何でしょう? NC旋盤の〇〇を交換

これは、とあるNC旋盤の主軸部分です。なかなかはっきりとお見せするのが難しい部分ではありますが…今回はここの修理の模様をお伝えします。

 

最近、NC旋盤の主軸ベアリング交換作業が続いています

 

毎日休まず、皆さんの仕事のために頑張っているNC旋盤。しかし、それだけ頑張っていると…だんだん、いろいろな所が疲れてきます。今回は、そんなNC旋盤の「主軸ベアリング交換作業」のお話です。

 

金属を切削加工するNC旋盤は、切削屑(切粉)を排出します。でも切削する金属の種類によって、出てくる切削屑(切粉)のカタチも違います。

  ステンレスやアルミ:シュルシュルっととぐろを巻いたような切粉

  真鍮:棘のような切粉

  鋳物:粉のような切粉

などなど…。

傍から見ていると「おぉ!どんどん削れていく!」と感動すら覚えますが、実は機械を分解すると、「なぜこんなところに!」という場所に切粉が入り込んでいることがよくあるそうです。

もちろん、切粉を一まとめにする仕組みもありますが、工作機械の表面にくっ付いていたり、NC旋盤やマシニングの前面ドアの隙間などにも入り込んでいたりします。実際、毎日修理している中島氏とほかの従業員の作業着は、洗濯すると切粉がポロポロ落ちてくるのは日常茶飯事です。

 

さて、いろいろな所に顔を出してくる切粉ですが、当然ながら主軸の機構内にも入り込んでくるのです。また、主軸は工作機械が稼働している間は回転し続けていますので、当然ながらベアリングも摩耗してきます。たとえば

  主軸が発熱した

  ガラガラ、シュルシュル、といった異音がする

  何となく、主軸が重たい感じがする

こういった違和感を覚えるときは、主軸やベアリングのあたりに切粉が入り込んで摩擦が起こり、摩耗している可能性が高いといいます(社長&中島氏談)。その場合、「分解して掃除する」という方法で済む場合もありますが、入り込んだ切粉が多いとか、主軸に大きな負荷がかかっているようならば、ベアリングを交換してしまった方が良い時もあります。

切粉が入り込んだからといって工作機械がすぐに停止してしまうことはありませんが、そのままいつまでも頑張って使い続けていると、主軸が固まって回らない!なんてこともあるのです。

 

 

分解、交換、組立という工程は同じだけど…

 

<切粉はどこに?主軸あたりを分解したところ>

 

主軸あたりに切粉が入り込んでそうだな…という場合、まずは主軸の前後部分にある部品を全部分解して、次の写真のように、本体から主軸を引き抜きます。

 

<とあるNC旋盤から引き抜かれた主軸>

 

<別のNC旋盤から引き抜かれた主軸とベアリング>

 

そして、新しいベアリングに交換して、再度組み立てます。NC旋盤により手順は多少違うこともありますが、

【分解する→新しいものに交換する】

という工程は変わりありません。それでも、1台のNC旋盤に中にはいくつものベアリングが組み込まれていることもあり、一筋縄ではいかないことも多々あります。

 

<1台のNC旋盤から次々と取り出されたベアリングたち>

 

そして新しい主軸を取り付けたら、慣らし運転(主軸をから運転させて馴染ませる)を行ったり、ピックゲージで主軸の中心にズレがないかを確認したりして、作業は終了です。

出張修理人の中島氏は、この作業を何度も経験済。疲れてしまったいくつものNC旋盤を生きかえらせてきました。しかしお客様からすると、そうそう見かける光景ではありません。

先日伺ったお客様(数件ありますが、どこかはナイショ)からは、「主軸ベアリングの交換なんて無理かと思ったけれど、出来るんだね。」とか、「こんなにバラバラにして、組み立てられるのか?大丈夫か?って、こっちが不安になったよ(笑)。」、「調子いいよ。ありがとう!」というお言葉をいただきました。

 

せっかく買った工作機械ですから、末永く大切に使って、お客様には(そして工作機械にも)いつまでも頑張ってほしいです!

イタリア製もお任せ!2ロール転造盤の主軸交換

株式会社ケーエスアイでは、週に1回、対面での打合せをしています。6月最初の打合せのとき、中島氏から「来週あたり、イタリア製の工作機械の修理があるよ」という話がありました。

うーむ。椿さん、取材に行きたいのはヤマヤマなのですが、スケジュール的に行けそうにありません。

というわけで、今回も中島氏に自ら写真を撮ってもらい、後から修理の概要説明を受けることにしました。

 

中島氏、イタリア製の工作機械とご対面

 

今回の修理先は、自社からほど近い墨田区。
こちらのお客様の工場には、Made in Japan の工作機械もありますが、今回の修理対象は「イタリアORT社製 2ロール転造盤」です。

最初、お客様から連絡をいただいたときに「主軸がボッキリ折れた」とうかがったそうです。

中島氏はこのとき、

 

 

と考えたそうです。そりゃそうですよね。国内メーカーでも、発注すると数日以上かかりますし、「今から取りに行きます!」というのも難しい距離です(海を渡るし…)。

しかし、お客様は今すぐにでも修理をご希望の様子。よくよく聞いてみると、この機械は以前にも同じ個所の修理をしたことがあるとのこと。その時の教訓からか、「主軸はいずれ折れるもの。それなら予備を持っておこう」ということになり、新品の主軸をお持ちなのだそうです。

修理箇所は分かりましたが、ひとまずは詳しく確認しないと。というわけで中島氏は早速、お客様の工場を訪問しました。

 

 

主軸以外にも交換すべき箇所を発見

 

さて、中島氏はお客様の工場に到着すると、さっそく機械と会話しながら修理箇所を念入りに調べます。

<ボッキリ折れてしまった主軸を確認しているところ>

 

主軸が折れているのは、すぐに分かりました。理由は金属疲労。そして、前受けがヘタってしまったことも関係しているようです。

さらに、いろいろ調べてみると、どうやらベアリングもダメになっている様子。これはまとめて修理しないと、きちんと動かすことは難しそうです。中島氏はすぐに、新品のベアリングを手配します。

 

 

いよいよ、壊れたパーツを交換

 

数日後、中島氏は届いたベアリングをもって、再びお客様の工場へ向かいました。

まずは機械を分解しながら、交換するパーツ(主軸、ベアリング)をどんどん取り外していきます。

<折れてしまった主軸を取り外したところ>

 

……しかし、こんなに太くて頑丈な金属の棒が、これほどボッキリと折れてしまうって、どれだけ無理な力がかかったのでしょうか。日本製とかイタリア製とか関係なく、やはり金属を加工する工作機械って、ものすごいパワーが出るものなんですね。以前、別のお客様のところでも「ボッキリ折れた軸」を見たことがありますが、その時と同様、ちょっと恐ろしい気がしてきます。

この機械は2ロール転造盤なので、加工している間は常に、ここともう1本の主軸に振動や圧力が加わっていますから、ある程度の年数が経てば必ず「金属疲労」は起こります。結果、今回のように「ボッキリ」と折れてしまうのだそうです。

 

さて、主軸が外れたら、今度はベアリングです。取り外したベアリングと新品を、並べてみました。違いが分かりますか?

<新旧のベアリング>

 

ベアリング交換が終わったら、今度はいよいよ新しい主軸を機械に取り付けていきます。

<新品の主軸>

 

後は元通り組み立てて試運転して……のはずなのですが、組立はそれほど簡単ではなかったそうです。

イタリア製だから、というわけではなく、主軸がなかなか入っていきません。元々、かなりみっちりと嵌っているパーツではありますが、今回は中島氏一人で修理にうかがっていたこともあり、押し込む力は一人分しかありません。新しい主軸を傷つけないよう慎重に扱いながら、最後は少しずつ叩きながら入れたのだそうです。

さて、元通り組み立てが終わったところで、お客様に協力していただきながら、試運転。動き、音、振動など特に問題もなく、元通り動くことを確認して、今回の修理は完了です。

 

今日もまた、お疲れ様でした!